「毎度のことで申し訳ないんですけれど、またシーズン初戦で260点くらいしか取れないなと思いました。不甲斐ないです」
予定していた「4回転+トリプルアクセル」にも挑めなかった。
「自分ができる最高の連続ジャンプとなると4回転からのトリプルアクセルです。跳びにいこうとは思っていました。でも直前の4回転サルコウでミスして、連続ジャンプの3回転をどこかに(リカバリーで)入れたいなと一瞬考えてしまいました。反省点が多いです」
今季はルール改正でジャンプ数が八つから七つになり、アドリブでジャンプを入れ替えられるほど慣れていない。結果として、連続ジャンプは三つ入れていいところを一つしか入れられず、大幅に得点を失った。
また演技については、
「本当に自分自身が子どもの頃から滑りたかった曲。やっぱり自分の実力があまりに足りませんでした。もっと練習して、(プルシェンコに)後ろめたい気持ちがないような良い感覚でプログラムを滑りきりたいです」
今回は他にも点の取りこぼしが多かった。スピンは回転数のルールが厳しくなったため、ショートでは一つが0点、フリーでは二つが減点された。またショートではジャンプを三つとも前半に入れていたため、後半でもらえる1.1倍のボーナスも得られず、「そうなると思っていたので、僕としては大丈夫です」と言いながらも複雑な表情。計画の見直しを示唆した。
「試合に出て良かったのは『やっぱり試合で勝ちたいな』という気持ちが強くなったこと。オリンピックが終わってから抜けていた気持ちが、自分の中に灯り、本当に火をつけられたような状態です。いま心の中は『勝ちたい』しかないので、悔しい気持ちでいっぱいです。それが一番自分らしいのかもしれない。本当に自分が頑張ったと言えるくらい、一皮剥けたと言われるくらい練習していきたいです」
インタビューを終え、選手ロッカーに向かいながら、斜め後ろを振り返って付け加えた。
「勝たなきゃ意味ないですから」
初戦で得たものは、燃えるような気持ち。いつもの羽生らしい言葉に、今季どんな爆発をしてくれるのか楽しみになる一戦だった。(ライター・野口美恵)
※AERA 2018年10月8日号より抜粋