仕事のやり方は劇的に変わった。やりたいことや課題があれば、各自が社内SNSにグループを立ち上げ、進めていく。入社4年目の神崎翔太郎さん(25)は営業担当だが、採用担当のグループにも参加し始めた。
「採用に関わって、自分事としてとらえる仕事の範囲が広がり、自分の成長も実感できて楽しいです」(神崎さん)
働く人が幸せを感じるためには、会社のカルチャーとその人の志向性の一致も重要な要素だ。だからこそ、幸せな職場は風土づくりがカギとなる。制度は他社のまねをすることができるが、その根幹となる文化・風土だけは、一朝一夕にはできない。
これまでになかった完全オーダーメイド型結婚式のプロデュースで急成長するCRAZY(クレイジー)社で、その風土づくりに挑戦しているのが小守由希子さん(27)だ。創業時からのメンバーで、これまで式のプロデュースや営業を担当してきたが、半年前に「カルチャーオフィサー」という専任ポストを作るよう幹部を説得。自ら就任した。会社が成長し社員が増えるにつれ、一人ひとりの方向性がバラバラになっていくことに危機感を覚えていたという。
同社のカルチャーの根幹にあるのは「生きることと働くことを分けない」「自分が幸せでなければ人を幸せにできない」という考え方。それを象徴するのがランチタイムの光景だ。専任のダイニングチームが作ったこだわりの自然食を、85人の社員全員が毎日、一堂に会して食べる。健康は幸せの基本であり、そこに会社が責任を持つという考えからだ。
まるで給食のようにワイワイ食べている輪の中で、ひときわ楽しげだったのが井上雄貴さん(31)。聞けば以前は都庁職員だったという。
「当時はコンビニ弁当を一人自席で食べてました。あのころは心が乾いていましたね(笑)」
井上さんは、同社の元お客さんだ。小守さんが初めてプロデュースしたのが、井上さんの結婚式。「そのとき、裏方の人たちが実に楽しそうに働いていて、『なんだこの会社は』と衝撃を受けた」という。同社では社員の2割が井上さんのような元お客さんだ。ハッピーに働くカルチャーが、外部からの人材を引き寄せる役割も果たしている。
「このカルチャーはブランドイメージにもなり、共感するお客さんが増えることでビジネスも成長します」(小守さん)
(編集部・石臥薫子、深澤友紀、ライター・澤田憲)
※AERA 2018年9月17日号より抜粋