矢崎氏には、隣接する千葉4区を地盤とする野田佳彦元首相が、朝と夕方の街宣に同行し、15日も応援演説をしている。「有権者の支持が高いのは、野田さんのおかげだ」との声も聞いた。その野田氏は、

「山口2区と4区の補選はやむを得ない。和歌山1区と参院大分選挙区の補選も“民主主義のコスト”(民主主義を維持するための必要経費)といえるだろうが、千葉5区補選は『政治とカネ』の問題で、現職の国会議員が辞任し、その説明もなかった」と主張し、聴衆はうなずきながら聞いていた。

 それから3時間半後、同じ本八幡駅前で岸田首相を迎えて英利氏の街宣が行われた。

 こちらは大がかりな動員をかけられたのか、北口がほぼ塞がるほど聴衆が多かったが、とりわけ目立ったのは厳戒な警備態勢だ。

 というのも、この日の午前に和歌山県の雑賀崎漁港で岸田首相に爆発物が投げられた事件が発生したからだ。岸田首相には当たらず大事には至らなかったが、警察官や聴衆の男性が軽傷を負ったという。

岸田首相に爆発物を投げた直後に取り押さえられる木村隆二容疑者=4月15日
岸田首相に爆発物を投げた直後に取り押さえられる木村隆二容疑者=4月15日
取り押さえられた木村容疑者の近くに落ちていた銀色の筒=4月15日
取り押さえられた木村容疑者の近くに落ちていた銀色の筒=4月15日

 昨年7月の安倍元首相の銃撃事件を思い起こさせるには、十分にショッキングな出来事だった。

 組織的な動員に加え、このニュースを見てやってきた人も少なくなかったに違いない。だが岸田首相はさほど動じていないようで、街宣の後には行きつけの都内の理容院に立ち寄っている。

 散髪は岸田首相の2週間に1度の“ルーチンワーク”だというが、髪を切ってもらいながら岸田首相はいったい何を考えていたのだろうか。髪とともに吹っ切ったものがあったのかもしれない。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

■あづみ・あきこ 兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

暮らしとモノ班 for promotion
2024年最後の最強開運日は12月26日!キャッシュレス派向けおすすめミニ財布48選