

エチオピアで長年、フィールドワークを続けてきた文化人類学者の松村圭一郎さん。エチオピアは人と人とが密に交わる「共感の国」に対して、日本は人が大勢いるのに「まわりの人が不在」と評する。日本にはびこる孤独を解消する手立てはないのか。
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──最近、科学的なデータでも孤独が引き金になって健康を害する場合があるとのこと。「まわりの人が不在」の社会で最もしわ寄せがくるのは、単身者なのかなと。私は若年性認知症当事者の佐藤雅彦さんとの地元での交流を通じて、よりそのことを考えるようになりました。
松村:介護は受けずに自立して暮らしている方ですか?
──はい。ケアハウスで暮らす佐藤さんは、食堂のごはんと、掃除のサービスは入れています。あとは自分一人で。認知症になっても、なるべく外に出ていって人に会い、暮らしを楽しめる。だから、認知症の人が何もできなくなるという偏見は持たないでほしいと、全国を飛び回って講演しています。ボランティアにも出かけていくし、レッスン料を支払って、ピアノや絵画の個人講師もつけています。
松村:生活を工夫していますね。
──にもかかわらず、時に逃れようがないほどの孤独感に陥ることがあるそうです。SNSのメッセンジャーで私に直接、気落ちしていることを打ち明けてきたことがあります。その時、地元のコミュニティーカフェ活動が停滞していたので、「佐藤さんは絵を描きためているし、前から絵画展を開きたいって言っていたから、あれ、やりましょう!」と、個展の開催に結びつきました。ちょっと危うい状態だなと気づくことができたのも、自身が普段から発信を続けてきたからなんですね。