同ミュージアムで開催中の「かこさとしのひみつ展」にはセツルメント活動で子どもたちが描いた絵やさまざまな写真も展示されている。その前で、かつてセツルメントに通っていた兄妹、吉田勤さん(72)と森ミツコさん(70)に出会った。

「かこ先生は私たち子どもにも、対等に接してくれました。先生とわいわい遊ぶのが楽しかった」と、ミツコさん。子どもたちのことを「子どもさん」と、必ず「さん」をつけて呼び、分け隔てなく接したかこさんの面影が思い起こされる話だ。

 偲ぶ会の最後に、かこさんの長女である鈴木万里さんが挨拶に立った。前出の『未来のだるまちゃんへ』のタイトルは、当初、『遺言』だったと語り始めた。

「『遺言』ではあまりに重すぎます。そこで誰あての遺言なのかと考えますと、かこさとしがお目にかかることがかなわない、未来の子どもさんたちにも伝えたい言葉であるということでしたので、今のタイトルに落ち着きました」

 生命力に満ちている、元気なだるまちゃんのモデルは、かこさんが出会った多くの子どもたちだという。かこさんが描き続けてきただるまちゃんは、世界に生きるすべての「子どもさん」たちの姿にほかならなかった。(ライター・矢内裕子)

AERA 2018年8月27日号

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