「私、自分で離婚届を出しに行ったんですが、帰り道は跳び上がりたいくらいうれしかった」

 そしてなぜか彼女は駅前広場で大道芸を見せていた若い男性に「おにいちゃん、ごはん奢ってあげる」と近づいた。

「誰かと喜びを分かち合いたかったんですが、その場に知っている人もいなかったから……。そうしたらそのおにいちゃんがついてきて。定食屋に行って好きなものを食べさせました。そうしたらお礼のつもりなのか、『ボクのアパート、すぐそこなんだけど来ます?』って。興味津々で行ったら押し倒されて。自分でも大胆すぎてびっくりしたけど、心のどこかでそんなことを望んでいたような気がします。変わりたかったんですよ、私」

 約25年ぶりのセックスで彼女は身も心も満足した。若い彼の力ずくのセックスも悪くなかったという。

 以来、気になる男性には自ら声をかけ、友人としてつきあったり恋人関係になったり。

「自由って大事。そしていくつになっても自由を追い求めるのは誰にも阻止できないものだとつくづく思います」

 明るく笑う彼女は、「いいおうちのお嬢さん」でも「いい家の奥さん」でもない今が、いちばん「生きている実感がある」と言った。(文中カタカナ名は仮名)(ライター・亀山早苗)

AERA 2018年7月30日号より抜粋

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