「東大生や京大生はとくに知的好奇心が強く、プロフェッショナル志向が高い。コンサルティングファームや投資銀行では1年目から企業の課題解決などタフな仕事に取り組むことになり、いち早くプロフェッショナルになることが強く求められます。そうした点に、チャレンジ欲求をくすぐられるという学生が多いようです」
東大法学部4年の男子学生(22)は、仕事はしんどいかもしれないが外コンに決めた。総合商社は考えていなかったという。「外コンは若手にもチャレンジの機会を与えてくれ、頑張れば認められる社風が僕には合っている」
東大生や京大生たちに取材をしていくと、彼ら、彼女らは日本企業に見切りをつけつつあるようにも見える。長い下積みや研修、社内政治などの日本企業の慣習は、彼らにとってはスピード感を損なう弊害に映る。
「外銀」に内定した東大法学部4年の別の男子学生(23)は、総合商社は仕事が楽しそうで福利厚生も充実しているが、配属リスクが大きいと考えている。
「総合商社は総じて自分の意思とは違う人生を歩むリスクが大きい。また、仕事のスピード感が遅いことにも嫌悪感がありました」
東大経済学部4年の女子学生(21)は、ある総合商社のワークライフバランスを聞いて幻滅・失望した。女性社員が夫と幼い子どもを置いて海外赴任したと説明を受けたのだ。
「結婚しても安定して働きつづけたいと思うので、私には総合商社はちょっと……」
総合商社はよくも悪くも「ザ・日本企業」だ。
採用コンサルタントの谷出正直さんは、東大生や京大生の価値観と「ザ・日本企業」のキャリアパスとが一致しなくなり、そのことが総合商社人気を下げている要因と見ている。
「例えば、総合商社は配属先を選べず、その配属先や社内政治によってその後のキャリアが決まる。10年近い長い下積み生活もある。こうした働き方が今の若者、とくに自分の人生やキャリアを選べる側にいる東大生や京大生の価値観と一致しなくなってきている。しかも、終身雇用が崩れ転職が前提となりつつあることを見据えると、日本企業に入社することをリスクとも感じている」
とはいえ、決して総合商社が凋落したというわけではない。