子どもに中学受験させるべきか、高校受験でいいのか、悩む親は少なくないのでは。中学受験大手・日能研グループのみくに出版が発行する中学受験専門誌「進学レーダー」の井上修編集長と、最難関高校受験で圧倒的な合格実績を持つ進学塾「早稲田アカデミー」の酒井和寿高校受験部長に、受験をめぐる現状を聞いた。
──大学入試改革が迫っていますが、影響はありますか?
井上:大学入試センター試験の代わりとなる大学入学共通テストの全容がまだ見えていません。そんな不透明感から、有名私大の付属中学はどこも人気です。ある意味、先にブランド大学への入学権を得る保険をかけているとも言えます。
──企業の人事担当者からは、私立中高一貫校で系列の大学までエスカレーター式に進学した学生を嫌う声もあるそうです。
井上:大学付属の中高一貫校もそれに気が付き始めています。例えば明治大学付属明治高校(調布市)などは、英検2級取得など、大学進学に一定の厳しい基準も設けています。大学付属校はエスカレーター式という意識は保護者に強いのですが、大学としては大学の中心になる人材に育ってほしいと思っています。
──高校受験への影響はどうでしょうか?
酒井:中学受験同様、ご縁があれば高校受験で決着したいという意識が働いています。8月に早稲田・慶應の付属高校セミナーを企画したところ、2週間で想定を上回る1千件の申し込みがあり、急遽、イベント数を追加しました。
さらには、地方の大学へ学生を誘導しようとする国の政策によって、首都圏にある私大の入学定員が厳格化されている影響も大きい。模擬試験などでA判定だったとしても、定員の厳格化で合格ラインが上がり、不合格になるという事態が特に文系学部で起こっています。早い段階で大学のブランドを買えるなら、比較的入りやすいと言われる大学付属の高校に入りたいという希望は多くなってきています。
──なら、中学受験のほうがいいのでは。
酒井:公立高校で言えば、東京なら日比谷高校(千代田区)、神奈川なら横浜翠嵐高校(横浜市)が頂点にいます。まだまだ東大に何人入れられるかは大きな価値観ですが、そこに価値を感じない人も出てきています。22年度から実施される新たな学習指導要領が公表され、大学入試も知識の詰め込み型から思考力や表現力を問うものに変わっていくでしょう。私立のように偏差値序列のタテ軸の価値観から、教育内容を見る横軸の価値観が強くなってきます。中学受験はどうしても経済的な問題などですべての人がチャレンジできるわけではありません。公立高校に新たな選択肢がどんどん出てくればいいと思います。
(構成/編集部・澤田晃宏)
※AERA 2018年7月16日号より抜粋