先ほどのLVMHグループに至っては総売り上げが400億ユーロ(≒5兆円)を超え、東京電力(19位)、東芝(23位)クラスの売り上げになっています。こう言ってはなんですが、単なるブランド宝飾専門店が、日本の錚々たる大会社と肩を並べるというのは多くの日本人は想像できないのではないでしょうか。
彼らは単なる1次、2次産品専門会社にしか過ぎず、日本の製造業のように、最先端の科学技術を駆使し生産現場でも緻密にコストを下げ、常に中国その他の新しい産業国と熾烈な競争を繰り返して勝ち残るという企業とは全く違うコンセプトと言えます。
しかし、LVMH、シャネル、さらにはワインなどの食料品を含む1次産品を日本人がありがたがって買うので、フランスは日本に対しては毎年貿易黒字を確保。こういうローテク商品に日本の高度工業製品はかなわないのです。フランスのブランド品はまさに最強の輸出品と言えます。工業分野は今や中国が競合先ですが、そのうちインド、アフリカ勢などとの競争にさらされるリスクが極めて高く、高度技術でもすでに中国との熾烈な競争になりつつあります。
一方、シャネル、ルイ・ヴィトンのライバルは日本はおろか、中国にもいないわけで、国の経済としてどちらを目指すべきかと言えば、答えは明らかではないでしょうか。
※AERA 2018年7月9日号