「退職後に貧乏な暮らしはしたくない。年金が崩壊しても暮らせるだけのお金をためるには、早く行動しなければダメだと思った」(サキさん)
今住んでいる東京都港区には「セレブママ」も多い。サキさん自身はセレブ志向ではないが、東京でそれなりの暮らしをするにはお金がかかる。インスタグラムでは、投資系のアカウントの盛り上がりもすごい。リスクを気にしている場合じゃない──。投資熱がメラメラと燃え上がっていった。
サキさんは、出産祝いや子ども手当、子どものお年玉などをためていた100万円を、投資に回すと決めた。今年2月、投資成績が評判のアクティブファンド「ひふみプラス」をNISA枠で30万円購入。AIを投資に応用する技術にも興味がわいたので、ビッグデータやAIを活用した「GSビッグデータ・ストラテジー」で外国株式にも20万円を投資した。今後は、IPO(新規公開株)の購入も検討しているという。先の「100万円」とは別に、これからは毎月8万円ほどを投資に回す予定だ。
将来、サキさんは2歳の長女にも自分が投資している姿を見てほしい、と語る。
「娘が生きる時代は、今よりも投資がより重要になっているはず。でも、学校は投資について教えてくれない。親の背中を見て、お金のこともよく理解したうえで、人生を歩んでほしい」
子どものいる家庭にとっては、教育費も切実だ。「Money&You」取締役でファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「教育費への備えを、つみたてNISAでしようと考える人も増えてきた」と語る。高山さんが相談を受けることが多い文京区、千代田区、港区などの家庭は教育熱が高く、中学受験の塾代に300万円以上かける家庭もある。つみたてNISAで利益が出たらそれを塾代に充てようと投資をスタートさせる人もいるという。
教育資金のためにつみたてNISAを使う場合、高山さんは「下降局面ですぐに売らないことが大事」とアドバイスする。
「国内外の株式、債券、REIT(不動産投資信託)まで入れたバランスファンドで分散投資をすれば、極端な乱高下は起こりにくい。『元本割れ』を嫌って一喜一憂せず、最低でも7年は運用すれば、積み立て投資の複利効果が実感できるはずです」
(文中カタカナ名は仮名)(編集部・作田裕史)
※AERA 2018年7月9日号より抜粋