しかし、1-1に終わったグループEのブラジル対スイス戦では、スイスが同点ゴールを挙げる直前と、ほかにもFWに対するペナルティーエリア内でのプレーについて、いずれもファウルがあったとして、ブラジルがVARの適用を訴えたが拒否されたという。必ずしも双方が納得する結果になっていないことも事実だ。
たとえば、早くからビデオ判定を導入しているテニスでは「チャレンジ」といい、選手が判定を不服とすれば一定回数ビデオ判定を要求できるなど公平性が保たれているが、サッカーの場合は現状、ビデオ判定になるかどうかは審判に委ねられている。適用の範囲が曖昧な部分も否めない。
日本代表DF吉田麻也はコロンビア戦の直前にVARの導入について、こんな話をしていた。
「良い面も悪い面もある。試合を見ていると、審判もギリギリのところの判定はビデオ任せにして、いったんは流し気味にやっている。実際に大会前にそうした通達がFIFAからもあった。個人的には(判定の)タイミングが遅れることで、試合の雰囲気を壊すようにも感じるが、決まった以上は選手として対応するしかない」
FIFAによれば、VARはテスト段階で判定の正確性を、93%から98.8%に高めたとしているが、判定を完璧にするものではないことも強調している。とはいえ、VARの適用が大会の行方さえも左右しそうな気配もあり、判定次第ではその是非をめぐる議論も活発化しそうだ。(スポーツライター・栗原正夫)
※AERA 2018年7月2日号