たとえば、申し立て書類をネット上で、自動作成ツールなども使いながら自分で作ることができたり、それをオンラインで登録できたりすれば、利便性は格段にあがる。法的情報を得ようにも、ネット上の情報は玉石混淆だ。しかし、専用サイトであれば適切な情報収集が可能になる。

 相手方との交渉も、対面では交渉力の差や心理的負担で思うように話せないということがあるかもしれない。この点、ODRでは交渉時にチャットを使うことが多いが、自分のタイミングで返事ができるので、考える時間を確保できる。記録を残すこともできるため、事後的な紛争を予防することもできるだろう。海外では、交渉の自動化に関する技術開発も進んでいる。たとえば、当事者が合意可能だと考える金額をAIにレコメンドしてもらえるツールが実用化されているので、相手と腹の探り合いをする必要もなく、早期に和解にたどり着くことができる。

 第三者を交えた手続きをする際には、調停人が当事者間交渉のチャットに加わり、話し合いを促進することもあれば、ビデオ会議等を使うこともある。法的問題はともかく、技術的には、裁判官や調停人が行っているプロセスの一部または全部の自動化を支援するようなツール等も、そう遠くない未来に利用ができるようになるだろう。

 使われる技術にも段階があり、【図2】の横軸は、技術のレベルに合わせて三つに分類したものである。単に既存のITツールを使うだけでなく(導入フェーズ)、ODRプラットフォームを構築して1から4までのプロセスをシームレスにつなげようとする段階(発展フェーズ)、さらには、AI等の技術を活用してプロセスの自動化を図ろうとする段階(進化フェーズ)が示されている。

 将来的には、プロセス全体で、AI等の先端技術を使うことができるようになるだろうが、利用可能な技術や自動化の程度については、その他関連法規との調整もあり、政策的な議論が必要なところである。他方で、海外に目を転じると、特定の紛争類型においては自動化することを前提に、政策的な議論や技術開発を進めている国もみられており、日本国内における政策的議論よりも速いスピードで、関連技術の開発や社会実装が進展していくものと思われる。

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日本での議論の進展、国内外での活動