筒井清輝(スタンフォード大学社会学部教授)/2002年スタンフォード大学Ph.D.取得(社会学)、ミシガン大学社会学部教授、同大日本研究センター所長、同大ドニア人権センター所長などを経て、現在、スタンフォード大学社会学部教授、同大ヘンリ・H&トモエ・タカハシ記念講座教授、同大アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長、同大フリーマンスポグリ国際研究所シニアフェロー、同大人権と国際正義センター所長、東京財団政策研究所研究主幹。専攻は、政治社会学、国際比較社会学、国際人権、社会運動論、組織論、経済社会学など。著書に、『人権と国家:理念の力と国際政治の現実』(岩波書店・2022年。第43回石橋湛山賞、第44回サントリー学芸賞受賞)、Rights Make Might: Global Human Rights and Minority Social Movements in Japan (Oxford University Press 2018:アメリカ社会学会三部門で最優秀著作賞受賞)、Corporate Social Responsibility in a Globalizing World (Cambridge University Press 2015、共編著)、The Courteous Power: Japan and Southeast Asia in the Indo-Pacific Era (University of Michigan Press, 2021、共編著)。
筒井清輝(スタンフォード大学社会学部教授)/2002年スタンフォード大学Ph.D.取得(社会学)、ミシガン大学社会学部教授、同大日本研究センター所長、同大ドニア人権センター所長などを経て、現在、スタンフォード大学社会学部教授、同大ヘンリ・H&トモエ・タカハシ記念講座教授、同大アジア太平洋研究センタージャパンプログラム所長、同大フリーマンスポグリ国際研究所シニアフェロー、同大人権と国際正義センター所長、東京財団政策研究所研究主幹。専攻は、政治社会学、国際比較社会学、国際人権、社会運動論、組織論、経済社会学など。著書に、『人権と国家:理念の力と国際政治の現実』(岩波書店・2022年。第43回石橋湛山賞、第44回サントリー学芸賞受賞)、Rights Make Might: Global Human Rights and Minority Social Movements in Japan (Oxford University Press 2018:アメリカ社会学会三部門で最優秀著作賞受賞)、Corporate Social Responsibility in a Globalizing World (Cambridge University Press 2015、共編著)、The Courteous Power: Japan and Southeast Asia in the Indo-Pacific Era (University of Michigan Press, 2021、共編著)。

 でも、スタンフォードの大学院にははじめから産業界を目指す優秀な学生がたくさんいます。他の教授に「こういう学生を採っていいのか」と聞いたら、「当然だろう。それが大学の役割だ」という答えでした。考え方が全然違うと強く感じましたが、今ではすっかり慣れました。

 ヨーロッパの状況も似ていて、近年はケンブリッジやオックスフォード、フランスやドイツの一流大学の教授たちから「昔は成績の悪い学生が企業に行ったが、今はトップから企業に行ったり起業したりする」と聞くようになりました。こうした大学及び学生の動きは、ある意味で世界のトレンドになってきているのかもしれません。

筒井:日本でも最近、東大の卒業生が安定した大企業や官庁ではなく、ベンチャー企業に入る、起業家になるという動きがかなり増えてきているといわれています。

中内:最近、日本の政府は「お金を出すから起業しろ」などと言うようになりました。大学にも起業をサポートするお金が入ってくるようになっています。世界のトレンドを感じてか、起業したいという学生も増えています。しかし、スタンフォードが決定的に違うのは、どういうふうに起業してそれを発展させていくかということをよく知っている人、実際に経験した人が大勢いるし、それをサポートする人材も、そして資金も比べ物にならないほど豊富なことです。

 日本はそういうエコシステムができていません。人材もいないしお金も足りない。たとえば、大学が研究者に「スタートアップを始めなさい」とシードマネー(最初の資金)として多少のお金はくれても、その後はなかなか続かないわけです。

 起業して発展させるというつなぎが悪いと、その気になって起業したはいいが、3年でお金がなくなって潰れてしまうといったケースがこれからたくさん出てくるのではないでしょうか。優秀な学生がトレンドに乗って起業して失敗し、アカデミアからも企業からも外れてしまうことを非常に心配しています。

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