それでも生保が健全性を確保しているのは、これまで毎期の利益の多くを内部留保してきたうえに、資金調達による経営体力の増強にも注力してきたためだ。加えて、国内系生保では、金利の影響を受けにくい定期の保障性商品(死亡保障、医療保障、介護保障などのパッケージ)を主力商品に据え、収益力の維持・向上に努めてきた。

 多少気になるのは、国内系生保の多くが外貨建て資産の保有を年々増やしていることだ。保有資産に占める外貨建て資産の割合が3割前後に達した会社も目立つ。最近は外貨建ての保険も増えているが、保有契約のほとんどは依然として円建てであるにもかかわらず、各社は追加リターンを求めて外国証券に投資している。このうち半分以上は為替リスクをヘッジしていると見られるが、円高や海外金利上昇による影響を受けやすくなっているのは確かだ。

 損保の経営はどうだろうか。

 東日本大震災をはじめ、地震や台風といった大規模な自然災害が発生すると、損保は多額の保険金を支払うことになる。しかも、近年の大手損保グループは先進国や新興国の保険会社を次々に買収し、経営のグローバル化を加速しているため、米国のハリケーンをはじめ世界中のリスクを抱えている。

 とはいえ、こうしたリスクを引き受けるのは損保の本業である。単年度の決算だけに注目すると、自然災害の有無により損益が左右される不安定な事業に見えるが、実は各社とも、体力的には少なくとも200年に1回レベルの損失をも想定しているので、巨大台風が来ても耐えうる体力を持つ。また、家計分野の地震保険は公的な枠組みのもとで引き受けており、各社の健全性には影響しない。

 再保険も重要な役割を果たしている。再保険とは保険会社同士で行うリスクのやりとりで、これにより日本の損保会社は日本の自然災害リスクを海外の保険会社や再保険会社に移転することができている。

 なお、収入保険料の5割近くを占める自動車保険では、ここ数年の料率引き上げや等級制度(事故率に応じて保険料を割引・割増する制度)の見直しにより、収支が大きく改善した。自動運転車の登場など技術革新などにより、それほど遠くない将来に自動車保険マーケットは大きく変わるかもしれないが、当面は安定して推移するものと考えられる。(保険アナリスト・植村信保)

AERA 2018年4月9日号より抜粋

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