子連れ出勤制度を試験的実施した豊明市役所(豊明市提供)
子連れ出勤制度を試験的実施した豊明市役所(豊明市提供)
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愛知県豊明市役所では、3月から4月初めにかけて、全国の自治体で初の子連れ出勤制度「ワークwithチャイルド」(愛称「ワチャ」)を試験的に実施した。0歳~小学3年生を対象に、職員自身が子どもの面倒を見ながら就労するという試みだ。困ったときに助かるという見方の一方、仕事に支障が出るのでは、子どもがかわいそうと、SNS上では賛否両論の声が上がった。自身も制度を利用してみたという小浮正典市長に、制度導入を試みた意図や、利用者の声、周囲の反応などについて聞いた。

【写真】子連れ出勤時の職場として活用した部屋の一例

――子連れ出勤制度を試そうと決めたのはなぜですか。

 私自身も7歳娘と5歳息子の2児の父なので経験はあるのですが、子育てをしていると、どうにも回らないときが出てきます。子どもの行き場がない、けれど仕事は抜けられない、ワチャはそういった不意の事態を乗り越えるための制度です。

 豊明市もここ15年ほどで核家族化がぐんと進みました。共働きやシングルマザーのご家庭も多く、働きながら子育てをする悩みをよく耳にします。社会全体で子どもたちを育てるという自治体の使命として、何かできないか、常に議論をしていました。

 そうしたなかで、数年前から内閣府のほうで子連れ出勤を推奨する動きがあり、昨年末にオンライン勉強会にも参加しました。そこにヒントも得て、働き方の一つとして、市役所でやれるところからやってみようとなったわけです。

――実施前の職員の反応はいかがでしたか。否定的な意見もあったのでは。

 とくに市役所は窓口に多くの市民の方がいらっしゃる場でもあり、職務に支障が出るのではという心配の声が上がりました。そして、自治体の責任として試したほうがいいという声も、同じぐらいありました。担当部署の子育て支援課と議論を何度も重ねて、実施に至ったわけです。

 3月から4月は、まさに子どもの行き場がなくなりやすい時期です。転園などの移動や、卒園後から小学校入学までの預け先が決まっていないなど、環境の変化による端境期にあたるわけです。市役所にとっても最も忙しい時期ではあるのですが、実証実験として、確かな声を拾える期間なのではと考えました。

通常の仕事場であるデスクスペースだけでなく、別室も用意。併用した職員もいた。(豊明市提供)
通常の仕事場であるデスクスペースだけでなく、別室も用意。併用した職員もいた。(豊明市提供)
畳敷きの部屋も有効活用した。小さな子どもも安心して過ごせる。(豊明市提供)
畳敷きの部屋も有効活用した。小さな子どもも安心して過ごせる。(豊明市提供)

――働く場に保育所を設ける企業内保育なども増えています。市役所内に預け先をつくるという選択肢はなかったのでしょうか。

 ここは私が一番こだわった点なのですが、役所でモデルをつくり、民間企業など社会全体へ広めていくには、コストをかけない体制づくりが大切だと考えています。託児となると、専用スペースの確保、人件費といった問題が出て、現実的に難しいという判断になります。もともとある場所で親自身が面倒を見ることで、働く環境が柔軟に子どもを受け入れられるか、という取り組みです。

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市長自身も制度を利用した