「ノート」でもっと強くなる?(※写真はイメージ)
「ノート」でもっと強くなる?(※写真はイメージ)
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 プロ野球で活躍するピッチャーも、大学スポーツの雄も、ノートを書いていた。平昌五輪スピードスケート女子500メートルで金メダルを獲得した小平奈緒(31)も、ノートを書く習慣があったという。

 専門家によると、ノートを書くことによって『前運動野』や『運動野』が活発になり、スキルアップのトレーニングになることや、書くことによって頭に残りやすくなる、といった効能があるという。

 実は、こうした効能が言われる以前から、日本ではさまざまな競技でノートを書く習慣がある。シリーズ累計17万部の『野球ノートに書いた甲子園』を編んだ高校野球ドットコム編集長の安田未由さんは、6年をかけて、高校球児が書いた100冊以上のノートを見てきた。

 最古のノートは、長野県・松商学園の部内日誌。約65年前、1953年から2年間在籍した部員が自宅に保管していた。

「時間を守るなど、今に通じる部員心得が事細かに書かれていました。戦後8年足らず。戦争を想起させるラッパが部室に残っているのはどうだろう、といった提案めいた記述もあった」

 と安田さん。個人を伸ばすというより、集団を束ねるためのツールだったようだ。

 印象に残ったのは、昨季のパ・リーグ最多勝利投手、埼玉西武ライオンズの菊池雄星(ゆうせい=26)だ。菊池はこう話したという。

「ノートは、書くという行為よりも、静かにじっくりと自分と向き合う時間を確保することに意味がある」

 安田さんは言う。

「彼は技術的なことを自分の言葉で説明するのが上手だった。それに加えて、花巻東高校時代から哲学や心理学の本を読んでいた。本を読めば語彙(ごい)も増える。身体能力がすごく高いわけではないのにここまで活躍しているのは、言語能力が高いからだと思う」

 菊池雄星にしろ、冒頭の小平奈緒にしろ、才能だけで戦っているわけではない。

 諏訪東京理科大学共通教育センター教授で脳科学者の篠原菊紀さん(57)も言う。

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