平昌五輪の開会式で南北合同チームとなったアイスホッケー女子「コリア」の韓国、北朝鮮の選手2人からトーチを受け取る聖火最終点火者のキム・ヨナさん (c)朝日新聞社
平昌五輪の開会式で南北合同チームとなったアイスホッケー女子「コリア」の韓国、北朝鮮の選手2人からトーチを受け取る聖火最終点火者のキム・ヨナさん (c)朝日新聞社
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 2月10日、韓国・江原道江陵(カンウォンドカンヌン)市にある氷上競技会場では、女子アイスホッケーの南北合同チーム「コリア」の初戦が行われていた。応援席には、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の姿。その横には北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹・金与正(キムヨジョン)氏や金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長が座っている。ときおり笑顔で言葉を交わす光景が、試合の中継映像でもとらえられていた。

 結果はスイスに0対8と完敗。それでもリンクの両側の応援席には、赤いウェアで統一した北朝鮮の女性応援団約200人が陣取り、統一旗を振ったり、踊ったりしながら、「私たちは一つだ」などと大声援を送って盛り上がった。

 開会式での合同行進や聖火リレーも含め、南北融和の演出があちこちに組み込まれた平昌(ピョンチャン)五輪。しかし、その代償を強いられたのは、五輪の主役であるべき選手たちだった。

 女子アイスホッケーの韓国チームは、強豪国カナダから来たサラ・マリー監督の下、勝利に向けて強化態勢をとってきた。それが突然、五輪開幕直前の1月17日に政治判断で北朝鮮の選手との合同チームになることが決まった。「圧力だけは受けたくない」とマリー監督は困惑し、韓国の選手の一人からも「不可能であり得ないこと」と不満が出た。それでも監督や両国選手らの努力でなんとか予選リーグ3試合を戦い抜いた。日本戦では初得点も挙げたが、成績は3戦全敗。各国との実力の差はあったにせよ、政治介入に振り回された選手たちが、かわいそうだった。

「五輪の主役は政治家ではない。監督さんが困惑するのは当然です」

 そう憤るのは、国学院大学の笹田(旧姓加納)弥生准教授(54)。今から38年前、政治によって出場の機会を奪われたモスクワ五輪(1980年)の女子体操、元日本代表選手の一人だ。

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