そして、こんなほろ苦い思い出も語ってくれた。
「実は先週、このお店で振られたんですよ。偶然ですが、いま座っているこの席で。僕が告白して、返事を4カ月待って。『もうふっ切ろう』と思った矢先に『会おう』って言われて。『振るなら振ってほしい。即死で頼む』と言ったら、開口一番『友達でいよう』って言われました」
その後も話は多岐にわたり、「たばこはウィンストン」「バイクは相棒」「哲学が好き」「不確実性の時代にこそバンカラ」など、とがったトークを繰り広げた山田さん。3年生だと就職も考え始めるころだろうが、自分の将来についてはどう考えているのか。
「3年になるとみんなボサボサだった髪を整えたりして、ピシッとなるんですよね。俺もそろそろ準備しないとな、なんて思いながら、そんな周りの流れに抵抗したい気持ちもあるんです。今は映画監督になりたくて。脚本を書いたり、新しく映画のサークルに入ったり、具体的に動いています。会社に入ったり、インディーズで作ったり、いろんな道があるんでしょうが、仮に就職して社会の型にハマったとしても、バンカラは終わりではないと思うんです。内面の反骨精神は一生残っていくと。何モノの奴隷にもならないけど、自由の奴隷でありたい。そんな人間でい続けたいですね」
今後、彼がどんな映画をつくるのか楽しみだ。
■げたではなく「便所サンダル」をはくバンカラ学生
「キャンパスに慶應っぽい大学生が増えてきてるな、なんて思うことがありますね」
こう言うのは、早稲田大法学部4年の石橋直弥さん(21)。彼は昨年の「早稲田王決定戦」で優勝し、早稲田王に輝いた人物。山田さんも尊敬するバンカラの一人だ。
たしかに、早稲田のキャンパスを見渡すと、同じ雰囲気のオシャレをした学生が多い。例えば、いま学生の間では韓国風のマッシュの髪形がはやっているが、同じ髪形をしている学生がよく目につく。
「最近のはやりに乗っかった『THE 大学生』みたいな学生がけっこう多いんですよ。でも、早稲田的なバンカラって、主流ではないところで良さを見いだすところにあると思うんです。泥臭い感じが格好いいし、僕はそっちのほうが好きなんです」