●「一流大学なのにできない」同僚に陰口を言われた
それでも懲りずに、小料理屋でバイトしたが、メニューを覚えられず、中国人や韓国人の店員にフォローしてもらう有様だった。パート従業員の中年女性が、「大学は一流でも仕事のできない人っているものなんだね」と聞こえよがしに私のことを他の店員に話すのが耳に入り、いたたまれなくなって辞めた。
コンビニの店員をしても、同じように店長に叱られてばかりで勤まらなかった。
大学を出てからOLになったが、ここでもひどい評価を受けた。とにかく仕事ができないから、会社に対して申し訳なかった。コンピュータールームでひたすらデータを打ち込む仕事は退屈でならなかった。しかし、誰も私に難しい作業はさせなかった。クビになってもいいと思ったが、不思議とリストラも肩たたきもなかった。
後で聞くと、この会社は今まで一度もリストラをしたことがないという。温情豊かな会社に就職したものだ、と思ったが、それでも仕事ができないことと、仕事に楽しさを感じられないことは致命的だった。可愛がってくれた女性社員が、
「もう辞めたほうがいいよ。向いてないよ。小説に専念しなよ」
と助言してくれたのをきっかけにして、私はOLを辞めた。