年を取るほど冒険はせずに、穏やかな生活を毎日送ることが幸せ……こんな先入観を持っていませんか? それもひとつの生き方ですが、脳を活性化させるという意味では、実は「人におおっぴらに言えないこと」をして生きる方が老化は防げるというのです。精神科医として30年以上高齢者医療の現場に携わる和田秀樹さんは、高齢者はギャンブルや株、はたまたピンク映画やキャバクラでもどんどん行っていいと力説します。その真意を解説してもらいました。(朝日新書『70代から「いいこと」ばかり起きる人』から一部抜粋、再編集しています)
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■「おおっぴらに言えないこと」こそ最高のクスリ
「したいことは我慢せずに、どんどんやってオーケーです」
私は高齢者のみなさんに、よくこのようにお伝えしています。すると、こんな質問を受けることがあります。「ギャンブルはどうですか? キャバクラはどうですか? マッチングアプリはどうですか?」
私は「もちろん、どんどんやってください」とお伝えしています。
お酒やたばこと同じように、「自分でコントロールできる範囲で」というのは大前提ですが、こうした「おおぴっらに言えないこと」は、人によっては最高のクスリになるからです。
まじめ一筋で人生を歩んできた人は、これまでたくさん我慢して、たくさん遠慮してきたことと思います。だからこそ、会社に勤めていたころ、子育てをしていたころには思いもつかなかった、不道徳なこと、不謹慎なことにチャレンジしてみてほしいのです。
不良少年ならぬ、「不良高年」になってみるのです。
なぜ、「おおぴっらに言えないこと」がよいのかというと、脳の前頭葉を活性化させるからです。
身体や脳の機能の老化を防ぐには、前頭葉の老化を防ぐことがカギとなります。そして、前頭葉の老化を防ぐには、「数独」や「100マス計算」をやるよりも、なんでもよいので「新奇なこと」をするのが効果的だとお伝えしました。
山に登る、絵を描く、日曜大工をする、ボランティアをする。こうした「みんなに言えること」をやるのも、それが本当にやりたいことなら、もちろん悪いことではありません。まわりの人から「若いですね」「すごいですね」とほめられて、自己肯定感も上がるでしょう。
ただ、山に登るのも、絵を描くのも、日曜大工をするのも、ボランティアをするのも、多少新奇性に欠けるように感じます。これまでの人生の延長線上にあるもので、脳は想定内のこととして受け取ってしまいます。
もっと自分の殻を破るようなこと、脳をびっくりさせるようなことをしたほうが、前頭葉を刺激することにつながります。そこで、これまでまじめに生きてきた人にこそおすすめしたいのが、「おおぴっらに言えないこと」というわけです。