同社では、管理が行き届かず、設備などが老朽化して廃虚のようになっている「スラム化」したマンションの管理組合の相談に乗ってきた。スラム化は、10~20戸ほどの小規模マンションで特に顕著だという。

「規模の経済が働かないので、管理費や修繕積立金が少額しか集まらず、運営しにくい。このマンションもそうだが、自主管理といいつつ、事実上の『無管理』状態は潜在的に多い」と明かす。

 利根さんは、老朽化したマンションの「看取り」の重要性を訴えてきた一人だ。費用面などから建て替えが困難で、廃虚化した建物を放置しないためにも、たとえば、マンション管理士などの専門家を無償で派遣して、組合が積極的に管理に関わり最後まで責任を持てるようにするための法制度など、未来を見据えた対策が必要だと考えている。このほか、修繕積立金に加え、取り壊し資金をあらかじめ積み立てるマンションも出てきているという。

「今は廃虚マンションの放置はそれほど問題になっていないが、将来、老朽化する建物が増えれば、大きな問題になる」と話す。

 国土交通省によると、築40年以上のマンションは2020年は103万戸。40年には4倍の404万戸になると推計される。

 マンションの管理を巡っては20年6月、改正マンション管理適正化法が成立。これまでマンションは私有財産であることから管理組合の自主的な管理に委ねられてきたが、管理の適正化のため、組合などの求めがなくても行政が積極的に関与できるようになった。

「最終的に取り壊しや建て直しを住民だけで進めるのは難しい。行政や専門家が管理をサポートすることが必要だ」と利根さんは話す。

■適正管理に向け、新たな制度も

 適正な管理に向けた動きもある。

 改正マンション管理適正化法に基づき、2022年4月から始まった国の「管理計画認定制度」がその一つだ。

 制度は、適正な管理のための基準を提示して、管理意識を向上させて管理不全を防ぐのが目的。国や地方自治体が示す約16項目を審査し、地方自治体が管理組合を「認定」する。一方、基準に満たない場合は助言や指導をし、さらに改善を勧告することもできる。

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