取材に応じた実父は言った。「娘と同じ年頃の女性を見ると、急に涙が止まらなくなったりもするので、周囲からは危ない人に見えるかもしれません」(撮影/写真部・小山幸佑)
取材に応じた実父は言った。「娘と同じ年頃の女性を見ると、急に涙が止まらなくなったりもするので、周囲からは危ない人に見えるかもしれません」(撮影/写真部・小山幸佑)
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 アルバイト先のファミリーレストラン「サイゼリヤ」の正社員を目標に、懸命に働いていた20代の女性が、3年ほど前、自ら命を絶った。何があったのか。

「許せないという感情とは、少し違う。でも、サイゼリヤでアルバイトを始めなければ、娘は間違いなくいまも生きていたでしょう。警察署の霊安室で見た眠るような顔を、忘れることができません」

 職人らしい節くれだった手も、まぶたも、唇も、時折震えていた。20代前半だった娘の自殺から間もなく3年。50代に差し掛かった父親は、睡眠導入剤なしに眠れなくなった。

 サイゼリヤは、埼玉県吉川市に本社を置き、関東を中心に国内外に1300店舗以上のファミリーレストランを展開する外食チェーン。その関東エリアの店で働いていた女性が、2014年12月、自室のベランダで命を絶った。

●娘の真実を伝えたい

 15年7月、前出の実父と実母、実母の夫で亡くなった女性の養父にあたる男性は、サイゼリヤと女性が勤務していた店の副店長らを相手に、計約9800万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。訴状で、女性が、既婚者で上司だった副店長に望まぬ性交渉を何度も強いられ、関係解消を求めたものの、「一緒に死のう」などと持ち掛けられて動揺、その翌日にロープを購入し自死に至った、サイゼリヤは副店長のセクハラ防止措置を講じず放置した、などと主張している。

 これまで遺族がメディアに直接心情を吐露することはなかったが、11月29日の証人尋問を前に、「娘の真実を知ってほしい」と実父が取材に応じた。

「事件の後、1カ月ぐらい会社を休ませてもらって、明けて初出勤の電車の中で失禁してしまいました。立っていて自分では全く感覚がなかったんですが、周りがざわついて私から離れていって。床を見るとダラーッと小便が垂れていました」

 その日は出勤をあきらめ、病院を受診した。

「自律神経がおかしくなって、脳と体の伝達がうまくいっていないと言われました。仕事はしていますが、電車が苦手になり、いまはなるべく早めに出て、途中で乗り降りを何回もして休み休み出勤しています」

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