実父と実母は一人娘だった女性が4歳のころに離婚。女性を引き取った実母は再婚し、弟が生まれた。実父も再婚して1女1男をもうけた。女性は二つの家庭を行き来して、弟2人と妹をかわいがった。
「私が望んだのですが、離婚後は娘は私を下の名前で呼ぶようになりました。行きがかり上、下の2人の子もそうなりましたが(笑)。娘は頻繁に遊びに来て、中学に入るまでは毎夏伊豆の白浜と、千葉の館山に旅行に行きました。泳ぐのが好きで、ボディーボードも上手でした」
勉強はあまり好きではなかったが、学習塾を経営する実父のいとこが、折にふれて面倒を見ていた。そのいとこが言う。
「彼女は絵が上手で、高校も美術系に進学したのですが、当時からコンビニエンスストアでバイトをしていて、そっちのほうが熱心でした。僕にも喜々として仕事の話をよくしていました」
高校卒業後、サイゼリヤでアルバイトを始めると、それにのめり込んでいるように見えた。
「専門学校も途中で辞めてしまいました。心配で3回ほど食事がてら様子を見に行きましたが、遅刻の多かった学生時代と打って変わって、自分の勤務時間の30分も前に店に入り仕事の準備を始めているのを見て、目標を見つけたんだとうれしくなりました」(実父のいとこ)
●詳細な日記が示すこと
しかし、女性が正社員を目指して「定時社員」になったころ、件の副店長が女性の教育係になる。定時社員とは、月平均労働時間が120時間以上の準社員。サイゼリヤでは資格者からのトレーニングを受けて等級を上げていき、年間30~40人が正社員に登用される。女性にとっては、副店長が昇級を左右する「資格者」だったということだ。
13年12月ごろ、女性は実母にこう打ち明けている。
「副店長の距離感がおかしい。近すぎる」
副店長には第1子が生まれたばかりだった。実母は陳述書の冒頭にこう記している。
《娘が遺してくれたものを読んだりするうちに、副店長氏にボディータッチを繰り返されたり、シフトを重ねられたり、抱きしめられたりするだけでなく、一人暮らしの自宅に頻繁に上がり込まれて何度も性交渉を強いられ、「死ねばいいんだよ」に代表される数々の暴言を浴びせられたり、気に入らないことをすると無視されたりするパワハラを受け、結果的にうつ病になっていたことがわかりました》