8万円──。通帳の残高が10万円を切った時、イラストレーターの上田惣子さん(53)は、通帳を持つ手がぶるぶる震えた。3年前の秋のことだ。
25歳の時、自由な働き方に憧れ、勤めていたデザイン事務所を辞めてフリーランスになった。仕事の依頼は決して断らず、締め切りは厳守。仕事は順調に伸びていき、30代は年収1千万円前後をキープ。38歳で同業の男性と結婚し、ローンを組んで住宅も購入した。しかし、40歳の時に乳がんを発症。幸い治療はうまくいったが、1年間のブランクの後、転がり落ちるのは早かった。仕事の依頼は減っていき年収は600万円、500万円、400万円……とじわじわと下降。46歳の時、ついに年収はピーク時の3分の1の約300万円になった。このままでは無収入になってしまう。そう思い、出版社に営業をしまくったが全滅。不安で怖くて、夜中に目が覚めインターネットでアルバイトを探した。夫がいて住む家があっても、絶望感しかなかったという。