
前代未聞の育児小説はいかにして生まれたのか。『キッズファイヤー・ドットコム』の著者である海猫沢めろんさんがAERAインタビューに答えた。
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保育園不足にネグレクト。子育ての困難が社会問題化して久しいが、意外な(?)人から「育児」小説が届けられた。
「2011年に子どもが生まれたこともあり、編集者から『育児小説を書きませんか?』というお話はいただいていたんです。しかし集中して小説が書けるような状態ではなかったし、当初は無理だろうと思っていました」
作家は昨年から熊本と東京を往復する生活を続けている。
「妻が突然、『医者になる』と言い出し、猛勉強を始めたんです。そこから9年も浪人して熊本にある大学の医学部に入り、いま2年生。地獄の日々でした。一家の収入は少ないし、ぼくが終始イラついているので、妻は夜中に家を抜け出して、身重の体で近所の神社で勉強していたこともありました。ひどい話ですが、それくらい追い詰められていました」