「サルコペニア肥満」は、男性よりも筋肉量の少ない女性に多くみられます。通常の肥満よりも生活習慣病になりやすく、運動能力、とくに歩行能力が低下するため、転倒・骨折、寝たきり、死亡のリスクを高める危険な病態です。体重や体形が若いころと比べて変わらないために、気づかないうちに病状が進行していることがあり、注意が必要です。早めに気づいて、バランスの取れた食事と運動を心がけ、生活を改善していくことが肝要です。
高齢期に入ったら年齢が上がるごとにメタボよりもフレイルへの対策がより重要さを増していきます。高齢期前半までのメタボ対策ではBMIが参考になりますが、フレイル対策がより重要になってくる高齢期後半では、BMIを見るだけでは十分ではありません。
田中先生は、次のように話します。
「大事なポイントは、体重やBMIよりも『高齢期にいかに筋肉を減らさないようにするか』にあります。高齢者が無理にやせようとして偏った食事制限をすれば、栄養不足から筋肉が細くなり、抵抗力が低下して、かえって健康を損なう危険性が高まります。筋肉の衰えを防ぐためには、適度な筋力トレーニングやウォーキングなどの運動とあわせて、たんぱく質が豊富なバランスの良い食事を取ることが大切です」
高齢者の体重管理について、参考になったでしょうか。基本的な健康づくりの考え方をしっかりと身につけながら、人生100年時代の健康長寿を目指していきましょう。
(取材・文/坂井由美)
【取材した専門家】
筑波大学名誉教授 田中喜代次先生