人生100年時代、自立した生活を長く送るためには、要介護状態になるのを避ける、できるだけ遅らせることが大切です。そのひとつのカギは、立ち上がる時や転倒の防止に必要な「脚筋力」にあります。本連載では、年齢を重ねた親と子が一緒に考え、取り組んでいきたい「シニアの筋トレ」についてお届けしていきます。連載2回目では、からだづくりを始める前に知っておきたい【高齢者の体重管理】の基本的な考え方について整理します。
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健康長寿を実現するためには、要介護状態の前段階である「フレイル」を予防することが重要だということは、前回で紹介しました。フレイルとは、加齢により身体的・精神的・社会的に「虚弱」になった状態を指します。そのなかでも、とくに筋肉が失われ、筋力が低下する「サルコペニア」は、一番の危険因子だといわれます。そのため高齢者の場合、「筋肉量の減少」や「やせ」には特に注意が必要です。
一方で、「おなかが出ていることを気にしている肥満の高齢者は結構いる」「健診で体重や血液検査の数値を指摘され、やせろと言われた」という声も聞こえてきます。
■いくつくらいから「やせ」に注意すればいいのか
中高年に向けては、メタボリック症候群(以下、メタボ)対策として、盛んに「太り過ぎに注意!」と指導が行われています。
高齢者になった途端に「フレイルに注意」「やせてはダメ」と言われても、混乱するのは当然でしょう。では、メタボ対策とフレイル対策の転換点はいったいどんなタイミングで訪れているのでしょうか。高齢者は「太るな!」と「やせるな!」のどちらに従うべきか、一緒に考えてみましょう。
実際のところ、高齢者でどのくらい肥満の人がいるのかというと、国民健康・栄養調査報告(2019年)のデータによれば、男女ともに高齢者の3~4人に1人が肥満(体格指数:BMI 25以上)に該当しています。男女別の各年代の肥満の割合は、男性の60~69歳で35.4%、70歳以上で28.5%、女性の60~69歳で28.1%、70歳以上で26.4%となっています。
特定健診(メタボ健診)は、医療費を抑制することを目的として、40~74歳までの公的医療保険加入者を対象として2008年から始まりました。日本でのメタボリック症候群の基準は、【BMI(体格指数)25以上】【ウエスト周囲径:男性85センチ以上、女性90センチ以上】、かつ高血圧、脂質異常、高血糖のうち二つ以上に該当する状態と定義されています。異常値が見つかれば、食事制限や運動習慣化を通して減量するよう指導されるのが当たり前となっています。