※写真はイメージです
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 スマホの使い過ぎと認知症に因果関係はあるのか――。現在、さかんに研究が進められている。「脳トレ」の川島隆太教授が長く所長を務めてきた東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平氏に、将来の認知症へつながるリスクについて教えてもらった。(朝日新書『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋)

【図】スマホの使用時間と子どもの学力の関係はこちら

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 ドイツの精神科医であるマンフレッド・スピッツァー博士は、デジタル機器の使用によって引き起こされる認知機能の障害を「デジタル認知症」と呼び、警鐘を鳴らしています。

 もちろん、オンライン習慣によって引き起こされる「デジタル認知症」と、アルツハイマー病による脳の変性がもたらす認知症は、医学的に同じものとはいえません。しかし、「デジタル認知症」が、将来の認知症へつながるリスクとなる可能性は否定できないでしょう。

 国際的な専門家からなるランセット国際委員会の報告によると、認知症には12のリスク要因があることがわかっています。12のリスク要因とは、「15歳までの教育歴不足」「難聴」「頭部外傷」「高血圧」「飲酒」「肥満」「喫煙」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」「大気汚染」「糖尿病」です。これらのリスク要因を避けることで、認知症になる可能性を40%低くすることができると報告しています。

 12のリスク要因のうち、オンライン習慣と密接に関わっていると考えられるのは、「15歳までの教育歴不足」「うつ病」「社会的孤立」「運動不足」です。一つずつ、オンライン習慣との関係を見ていきましょう。

■リスク要因(1)学習の質が低下

 日本は中学校までが義務教育ですから、「15歳までの教育歴」という条件は、すべての人が満たしているはずです。しかし、スマホ等のデジタル機器を使用したオンライン習慣によって、教育の「質」が低下してしまう可能性があります。スマホ等のデジタル機器をたくさん使っていた子どもたちは、学力が低く脳の発達が止まっていました。つまり、小・中学生までの期間にスマホ等のデジタル機器を使っていた子どもたちは、「15歳までの教育」が十分になされていないという見方ができるかもしれません。

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脳が発達しきらない子どもたちの将来は