うつ病の傾向が高くなる理由の一つとして、SNSの使用が考えられます。2012年から18年までに発表された33報の論文を統合した研究では、SNSの使用とうつ病の傾向に関係があることが報告されています。SNSの使用時間が長いほど、またSNSを頻繁に確認するほど、うつ病の傾向が高いことがわかりました。特にSNSの投稿と自分自身を比べてしまう人たちほど、うつ病の傾向との関係が強く見られました。
もう一つの理由として、睡眠への影響が考えられます。1990年から2018年の間に14の国と地域で行なわれた23件の研究結果を統合した研究によると、インターネット依存傾向の高い人は健康な人と比較して睡眠時間が短く、睡眠の質も低いことが報告されています。
■リスク要因(3)SNSでは「つながる」はずが孤独に
SNS上のつながりは、本当に誰かと「つながっている」という感覚を私たちに与えてくれるのでしょうか?
内閣官房が2021年に実施した「人々のつながりに関する基礎調査」の結果を見てみましょう。
同居していない家族や友人たちと「直接会って話す」頻度について、「全くない」と答えた人たちのうち、孤独であると感じている人の割合は、48.6%でした。
週4~5回以上、直接会って話す機会がある方々の場合は、28.7%でした。やはり、対面コミュニケーションの頻度が低い人ほど孤独で、頻度が高くなると孤独感は低くなることがわかります。
次に、SNS(LINE等)をする頻度について「全くない」と回答した人たちでは、孤独であると感じている人の割合は39.1%でした。週4~5回以上、SNSをする方々の場合は、33.1%でした。対面コミュニケーションと比べて、SNS使用の頻度と孤独感の関係は顕著に見られませんでした。
つまり、対面コミュニケーションには孤独感を減らす効果がありますが、SNS上のやりとりはその効果が薄いのです。