■母親間のいじめ
「翌年度、本部で残留したのは会長の私以外、たった1人。やるなら、勝手にやれよ、みたいな感じでした。ポイント制を廃止することに対して、本部のお母さんたちは『わかりました』と言いつつ、実際は『こいつはなんなんだよ』と思っていたのかも知れません」
宮下さんは続けた。
「本部のメンバーが集まると、唯一残ってくれたお母さんが泣くんですよ、私はもうもたないかもしれない、と言って。後でわかるのですが、それまでPTAを支えてきたメンバーとか、その友だちからすごく責められていた。なんであんたやってんのって。やめちゃえばいいのに、とか。そこまで根が深いんだと思いました」
筆者もPTA改革を進めたとき、陰湿な嫌がらせを受けてきたので、それがどのようなものだったか、容易に想像がつく。
活動の見直しを提案した母親が他の母親たちから孤立し、つぶされる、というのは珍しくない話だ。PTAは日常生活の延長でもあるので、他の保護者と関係が悪化すると逃げ場がない。女性の場合は特にそうだろう。それがPTAがなかなか変わらない最大の原因だと感じる。
■PTAの正常な姿
宮下さんは新しいPTAで「サポーター制度」を立ち上げた。これはPTA活動を手伝ってくれる保護者を登録するもので、必要に応じてサポーターの手を借りる。
「最初、『お助け隊』というものをつくりました。例えば、体育祭のときに『お助け隊』を募集すると、何人か集まってくれた。そういう活動のやり方が機能することがわかって、『サポーター制度』を設立しました」
現在、PTA活動の中心は5、6人のコアメンバーで、その周囲にサポーターが100人以上いる。
「ただ、コアメンバーがやる気満々の人たちなので、PTAの活動はほぼそこだけでできてしまう。それでも人手が足りないときはサポーターに声をかける。手伝ってほしいときはいつでも声をかけてほしいと本気で思っている人が20、30人いる。こちらのやる気もすごいので、作業はとても効率的に進みます」
PTA活動の内容は毎年変わるため、引き継ぎ書に類するものは一切ない。
「今年度はこれをやろうとなったら、それをやるためにはどうすればいいか、コアメンバーが一生懸命に考える。いい案が出たら、みんながそれについていく」
必要とされる活動に対して会費を支払い、参加するのがPTAの正常な姿だと宮下さんは言う。
「ここまでやるのは大変でしたが、実際にPTAを変えてみると、ああ、これを維持していけばいいんだ、と思えるものになりました」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)