ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。
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ここまでの連載では、私がポジティブシンキングでものすごく前向きな人間のように見えますよね。もちろんそれは否定しませんし、私自身もそう感じています。ただ、凹む時もありますよ。スノーボードのこと、プライベートのこと、いろいろ思い悩むことも、決して少ないほうではないです。
私の解消法は、仲の良い友達に電話して、ひたすら愚痴る(笑)。ガクンと凹んでも、だいたい一晩。たくさん話してスッキリ、という感じです。
特に本音を話す友達がいます。それは、シモンとフィリップのショッホ兄弟。スイスで出会った、スノーボード界では知らない人はいない名選手です。彼らとは、性別とか人種とかを超越した信頼関係を築くことができています。だからいつも何かあったら、「ちょっと聞いて!」と連絡しちゃいます。競技の話はもちろん、プライベートのことでも、「こういう友達がいてね……」とか、起きた出来事を最初から順番に話したり。それで散々話を聞いてもらって、「じゃあまたね」と電話を切る。相手も文句一つ言わないので、良い人たちですよね(笑)。
2007年にスイスに渡った時に出会ったので、もうかれこれ10年の付き合いになります。いつも彼らといると思うんですが、たぶん世の中でこういう友人関係を持っている人は、珍しいんじゃないかなって。親友とか恋人ではない、特別な存在。日本にも信頼している人たちはいますが、そのほとんどは上の世代の人。中には私を子どもの頃から知ってくれている人もいるので、お互いを受け入れられる。ただ、同世代で言えば、やっぱり彼らだけ。そんな大切な二人と同時に出会えたことに、生きている価値を感じています。
彼らが持っている技術、能力、ボードなどのマテリアル、そのすべてを私に授けてくれました。しかも相談すれば的確な意見をはっきりと言ってくれる。彼らの前向きな姿勢、まったくネガティブではない考え方が、今の私の礎になったと言っても過言ではないです。さらにすごいのは、彼らは満足することなくまだまだ学び続けているということ。そこはもはやトップアスリートの域を超えた、人間的に優れている部分。アルペンスノーボーダーは、みんな彼らのことを尊敬しています。
たぶん一生壊れない関係。すべての感情を共有できる、本物の信頼がそこにあると思います。
※AERA 2017年10月2日号