ハンズさんが今回の日本滞在で購入した品々。「オランダ人は日本のものが好きです。そのルーツは長崎の出島にあります」(ハンズさん) (写真:ハンズさん提供)
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ハンズ・レンパーズさん(48)/幼少期から骨董市を歩き回るのが好きで、中学生時代からグラスや顕微鏡などを収集。日本の骨董品に興味をもったきっかけは浮世絵との出合い(撮影/編集部・小野ヒデコ)
東京都文京区にある護国寺で、毎月第2土曜日に骨董市が開催。朝7時から午後3時まで(撮影/編集部・小野ヒデコ)
ナディーン・カッツさん(53)/骨董市は朝7時から始まるところが多い。午前中に市に行き、午後は自宅でくつろぐのがナディーンさんの休日の過ごし方だ(撮影/鈴木芳果)

「断捨離」と言われても、なかなかモノが捨てられない。だが、インターネットのおかげで、実家の片づけや引っ越しで出るガラクタにも値がつく時代に。訪日する中国人が、家の片隅に置かれた中国骨董に高値をつけ、メルカリでどんどん遺品整理もできる。タンスの中は、宝の山だ。AERA 2017年9月25日号では「お宝流出時代」を大特集。

 骨董市で外国人を見かけることが増えてきた。転売して儲ける人やリメイクして楽しむ人まで目的は様々。骨董品のどこに価値を見いだしているのか。

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 8月4~6日、東京ビッグサイトで「骨董ジャンボリー2017 夏」が開催された。全国の骨董商500業者が集まる日本最大級の骨董市だ。出店した「丸山美術」の丸山正彦さん(70)は明治以降の男女の装身具を扱っている。

「中国人のバイヤーのほとんどは日本語が流暢で、話せない人は電卓片手に値切り交渉をしてきます。サンゴの玉がついた根付やかんざし、帯留めなどが特に人気」

 ある中国人男性は「ねがけ」という日本髪の髪飾を購入。サンゴがあしらわれていたからだ。ルーペや紫色のペンライトで本物のサンゴか念入りに確認をしていたという。

「サンゴを欲しがる中国人が多いですね。かんざしは要らないから飾りのサンゴだけ欲しいと(笑)」(丸山さん)

 週末に開かれる骨董市では、アジア系だけではなく、欧米からの来場者も目立ってきている。

 8月の小雨がぱらつく土曜日。東京・護国寺で開かれた骨董市が賑わってきたのは午前9時前だ。あいにくの天候のため、この日の出店数は普段よりも少ない40店舗。陶器などの食器や、江戸時代の硬貨、毛筆、手裏剣など100円単位から数万円のものが並べられていた。

 米軍横須賀基地で働く米フロリダ州出身のエリカさん(24)は、初来日の両親とやってきた。父親は一目ぼれした洋風のシルバーのティーポット(1万円)を購入して満足そうだ。中国・広州からやってきた20代の夫婦、チェンさんとユーさんは5枚セットの小ぶりの白いお皿(1千円)や巻物など数点を購入。日本の古いものが好きで、10日間の滞在中、骨董市やフリーマーケットを訪ね歩いているとのこと。ジェスチャーや英語を交えて出店者とやりとりをしていた。

 4年前から運営に携わる担当者は、年々明らかに外国人が増えてきたという。

「観光客の人は、お土産用に購入しているようです。2020年に向けて政府が外国人観光客の受け入れを推進していることが影響しているのでは」(担当者)

●購入品をネットで販売

 その一方で、日本の骨董品をビジネスの商品として捉える外国人もいる。

 オランダから来たハンズ・レンパーズさん(48)は、骨董品のバイヤーとして、年に2回来日している。週に3回、オランダ・ユトレヒトの大学で化学の教鞭をとる一方で、購入した品々をインターネットオークションやオランダの骨董市で販売しているのだ。日本企業で働いたこともあり、片言の日本語はできる。購入基準の一つは、「その品物にストーリーがあるか」。出店者とコミュニケーションを図り、かつての用途などを探っていく。

 ハンズさんは1999年に仕事で来日。骨董品に興味をもったのは浮世絵との出合いだった。

「木版画のクオリティーの高さに感心しました。日本の骨董品は装飾が細かいですよね」(ハンズさん)

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