値付けに関して、ハンズさんは基本的に購入した金額の2倍の値段設定をしている。すべての品が売れるわけではないので、「時々赤字になるが、基本的には黒字」という。今回の滞在では盃や刀の鍔(つば)、能面など約50万円分の品物を購入した。

 8月にオランダで出店した骨董市の売り上げは約30万円で、「大成功だった」と喜ぶ。売れたものは、盃、こけし、鏡、ポストカードなど。販売していた鍔7個全てを買っていったコレクターもいたという。

 オランダの法律で認められているマリフアナを吸う道具としてキセルを買った人も。また、気に入って購入した襖(ふすま)の引き手を自宅の引き戸に設置した人もいたという。日本の骨董品がオランダ人の日常生活に溶け込んでいるのだ。

 日本の骨董品を集め始めてから20年ほど経つが、当初は家族や友人はどうしてハンズさんが日本の古いものを集めているのか不思議に思っていた。しかし、今では収入に結びついているため理解を示してくれている。ハンズさんの一番の宝物とは何か。

●175個の盃を所有

「大日本帝国陸軍の盃です」

 上から見ると盃の底には日の丸国旗や戦闘機などのイラスト、「除隊」などの文字が焼きつけられている。175個所有している盃だが、一つとして同じものはない。千差万別だ。

「中には兵士の名前や兵長のメッセージらしきものも。私にとってはかけがえのない品々です」

 次回の訪日は10月だという。

「短くてタフなスケジュールになるけど、次はどんな骨董品に出合えるのか今からワクワクしています」(ハンズさん)

 米ペンシルベニア州出身で、東京都内に住むナディーン・カッツさん(53)は、日本の骨董品をリメイクして楽しんでいる。

 2015年に来日し、都内の私立大学で英語のクラスを受け持つ。最近、ワンルームの寄宿舎から、3倍の広さの住宅に引っ越した。「購入した商品を置く専用部屋」もできたと顔をほころばせる。ナディーンさんの自宅にお邪魔すると、テーブルクロスのように使用している帯や、リメイクした着物が目に飛び込んできた。

●良い物お値打ち価格で

 骨董市やフリーマーケットの開催リストを見て、毎週末どこかに足を運ぶ。良いものをお値打ち価格で購入するのが楽しみの一つだ。前出の護国寺の骨董市には初めて足を運び、花瓶など「実用的なもの」を約3千円分購入した。

 毎週末何かを購入していくと、モノが溢れてしまわないのか。買い物のコツは、「その品を買う理由をはっきりさせること」とナディーンさん。価格で判断せず、家での置き場所や用途など、具体的なイメージを持つことが大切だという。例えば、着物生地でクッションカバーを作ろうと思った場合、ソファーの色や雰囲気に合うか。パッチワークをする際に、他の柄や色とバランスは合うかなどを吟味して購入する。

 ナディーンさんの自宅にある着物のほとんどが千円以下で購入したものだ。着物は襦袢の上に着るため、直接肌には触れない。そのため、きれいな状態のものが多いという。襟部分を加工し、ボタンを付けリメイクしたものを普段使いしていると、街中で知らない女性に「これは着物ですか? 素敵ですね」と声をかけられることも。

「日本人じゃないからこそ、斬新な着方ができるのかもしれないですね」

 リメイクした着物の襟元に、自身でデザインしたのイラスト入りのタグをつけている。

「名字のKatzと猫のCatsをかけています。将来は自分のブランドとして販売したいですね」(ナディーンさん)

 2020年に向けて、日本に来る外国人はさらに増える見通しだ。日本の骨董品の価値や用途も変わっていきそうだ。(編集部・小野ヒデコ)

AERA 2017年9月25日号

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