「女性は身だしなみを整え男性は刃物を帯同し、夜11時までに会社に集合するように」

 私は婚約中だった夫と急遽、社宅で三三九度を交わすだけの結婚式を済ませると、撮影所に向かいます。死ぬことを覚悟していました。

 ところが、ソ連軍は姿を現さず、甘粕さんだけ終戦直後に青酸カリを飲んで自殺します。理事長なら最後まで残って社員を守らないといけないのに、自分だけ先に死んじゃった。甘粕さんだけ楽になるのは卑怯です。その後、1千人を超える満映社員と家族たちは帰国まで大変苦労します。社員は見捨てられ、日本に引き揚げたのは53年です。これまで10回近く現地に行き、昨年も娘たちと一緒に訪れました。また行きたいです。

(編集部・野村昌二)

AERA 2017年9月18日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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