ソチ冬季五輪で銀メダルを獲得したスノーボード女子アルペン・竹内智香選手が「AERA」で連載する「黄金色へのシュプール」をお届けします。長野五輪を観て感動し、本格的に競技をスタート。2018年2月の平昌五輪では念願の金メダル獲得を目指す竹内選手の今の様子や思いをお伝えします。

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 2002年のソルトレーク大会から、これまで過去4大会連続で五輪に出場することができました。初めのころは10代の新参者だった私も、気がつけば周りを見渡すと長いキャリアを辿ってきた立場になっていました。

 よく、いろんな方から言われることがあります。「いつまで現役を続けるの?」とか、「長年滑り続けてすごいですね」とか。確かに来年の平昌五輪で5大会目になりますし、この数字は選手の中でも多いほうに入ると思います。

 ただ、前回のソチ五輪で銀メダルを取った時に、「まだ終われない」という考えが頭に浮かびました。完全に金メダルを取るイメージを描いていたのに、「何で銀なんだろう?」と、現実との間にギャップがあったのです。そこで有終の美を飾って引退しようとか、そんなことではなくて。ただただ、勝てると思っていた。最終目標が金メダルだった。それだけを思い描いていたからこそ、悔しさというか、とにかくこのギャップを埋めないといけないという思いが、次へのエネルギーになりました。

 普通の感覚であれば、日本人の女子で初めてスノーボードのメダリストになったわけで、そこで完全燃焼したと感じてもいいのでは、と思うかもしれません。実際にそう言われることも多かったです。でもそこは、私がスイスでの競技生活を経験しているところが大きいのかもしれません。周りには金メダリストが何人もいた。そんな環境の中で、5、6年滑っていた。どこか感覚が麻痺したというか、金メダリストじゃないと本当の評価はされない、という価値観が出来上がっていきました。

 私の中で前回の五輪は、メダル獲得は最低限の目標でした。強がりではなく、取って当たり前──。それは何より、それだけの環境が私の周りには揃っていたので、メダルは当然の結果として得ないといけないものだったのです。でも今回こそは、よりメダルの色にこだわらないといけない。そう強く思います。

 ソチ五輪を冷静に振り返ると、今の自分なら金メダルを取っていたなと思う(笑)。ただ、やっぱりその大会、その都度完璧と思って滑っているけど、実際には完璧な滑りなんて永久に存在しない。だから、私にはさらにいい滑りができると信じています。来年は本当にこれ以上ないと言えるぐらいまでの自分を出したい。これが限界!っていうぐらいまでの滑りをしたいです。

(構成/西川結城)

AERA 2017年9月11日号