トンネル内壁の点検には高所作業車などが使用される。点検技術者はコンクリートを目視し、点検用ハンマーで壁を叩き、打音をチェックする。確認後は、壁に点検記録をチョークで書き記す。その写真について、「めちゃくちゃかっこいいじゃないですか」。山崎さんは声を上げる。
「最初、何が書いてあるんだろうと思って尋ねたら、直さなければならない箇所を補修作業する人にわかるようにするため、と言っていました。夜中、高所作業車のかごに乗って、どれだけ時間をかけて書いたんだろう、と思いました」
■緊迫の落下物拾い
アクアブリッジを支える橋脚についても近接目視・打音確認などの定期点検が行われる。木更津側の海辺には東京湾最大の盤州(ばんす)干潟が広がり、大潮の干潮時にはかなり沖合の橋脚まで歩いていける。
「年1回行われる海上徒歩点検に私も同行させてもらいました。構造物のそばまで行くと、もうあり得ないっていうか、その大きさをまざまざと感じました。橋脚に触ると、見たことのない生きものの脚というか、なんか血が通ったものに触っているような感覚を覚えました」
写真集は道路パトロールを行う安全管理隊のシーンで終わる。メンテナンスを含めて、海の道の安全を守る人々の使命感や情熱を彼らの表情で表したかったからだ。
「夜間のパトロールに同行させていただいたとき、落下物の緊急通報があったんです」
写真にはトンネル内で落下物を拾う隊員の背中が写っている。
「車がビュンビュン走っているところで、どのタイミングで拾いにいくんだろうと思ったら、あっという間にバーッと走っていって、落下物を手に帰ってきた。こんなに緊迫したシーンは見たことがなかった」
命がけの作業のように感じたが、隊員の話によると、かなり危なかったこともあったという。
「車が来ないことを確認して走っていったら、途中でしりもちをついてしまったそうです。車が来て、ああ、もうダメだ、と思った瞬間、危機一髪でよけられた。それだけ体を張って作業されているっていうか、使命を持って仕事をしていることに驚かされた。この目で見た体験とともにすごく印象に残っているエピソードです」
アクアラインを職場とする人々の表情からは、この道路を建設した会社の一員としての自負と愛情が感じられる。
(アサヒカメラ・米倉昭仁)