撮影:山崎エリナ
撮影:山崎エリナ

 緊急避難通路は海面下を走る高速道路の真下に設けられている。

「写真を見てのとおり、ライトがついた四角い美しい空間です。これがずーっと9.6キロも続いていて、宇宙空間のようにも感じられた。まあ、当たり前なんですけれど、窓がない。閉所恐怖症の私にはかなりきつかったですね(笑)。通っていくうちに慣れましたけれど」

 通路の途中にはいくつも部屋があり、機械設備や電気システムが置かれている。

「アリの巣に入ったアリのように、狭い空間で作業しているシーンはかなり面白くて、一番興奮した場所でもありました」

撮影:山崎エリナ
撮影:山崎エリナ

■壁の点検記録もかっこいい

 緊急避難通路のほぼ中間地点には巨大な換気設備があり、その上には「風の塔」と呼ばれる川崎人工島がある。

「作業車が載るサイズのかごのエレベーターで上がると、すばらしい空間があるんですよ」

 そこは海上に突き出た風の塔の内部で、写真には入り組んだ鉄骨が写っている。風の塔は海底トンネルの換気設備なので、文字通り、風の音が聞こえそうだが、不思議なことに音は全くしないという。

「シーンとしていて、神殿にでも来たのかな、という感じです。密閉空間なので夏はめちゃくちゃ暑い。蒸し風呂状態です。そこの階段をメンテナンス機材を背負い何往復もする」

 二つの風の塔は、それぞれ高さ90メートル、75メートル。上り下りするだけでも大変だ。

「密閉空間とはいえ、海上にあるので、さびができやすく、定期的に鉄骨を塗装しなければならないそうです」

 こまめな補修が必要なのは一般車が走行するアクアトンネルも同様だ。天井に足場を組み、鉄よりも引っ張り強度のある繊維シートを貼りつけ、コンクリートの破片が落下するのを防ぐ。

「作業をしているみなさんにとっては当たり前のように行っている補修らしいんですけれど、何をやっていてもかっこよく見えました。それに、天井に上がれるというだけでワクワク度100倍。ボルテージが上がりました」

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緊迫の落下物拾い