
石山 独居老人が増えて、孤独死や鬱も社会問題になっていると感じますね。
荒川 いまの高齢者の方々は、仕事人間だった人が多いんです。
会社勤めで友だちがたくさんいると思っていたが、退職後に本当の友達がいなかったと気づくことも多いです。そうすると、話す人が妻だけになって、依存するようになるんです。「妻唯一依存症」ですね。妻の買い物にもついていくようになるんです。
石川 趣味とかがあればいいんですけどね。それがないから、妻に依存してしまうのでしょうか。
荒川 そうですね。だから、私は職場という「所属するコミュニティ」があるうちに、「接続するコミュニティ」もできるだけつくっておきましょう、と勧めています。
例えば、趣味のメンバーと接続したりすることです。ネット探してトークイベントに参加したり、自治体の読者会にいくというのでもいいと思います。
私は所属するコミュニティを「居場所」、接続するコミュニティを「出場所」と呼んでいます。出ていくことで「出場所」はつくることができます。
趣味とかがない人には、仕事を続けることを勧めています。少なくとも、仕事を通じて、人との接続はしやすくなりますから。
石山 シェアリングエコノミーも解決策の一つになると思います。消費という行動で、人とつながることができるからです。
コミュ力がなくても経済活動でつながることができる。人とつながることのハードルはかなり下がると思っています。
荒川 若い人たちが、多様な体験を喪失していることも気になっています。
いま出産や子育ては特権的な行為になってきています。例えば、東京23区で出生率が高いベスト3は、中央区、港区、千代田区で、平均所得が高い区です。
他方で、かつて出生率のベスト3の常連だった江戸川区、足立区、葛飾区は、15年をピークに急減少しています。これらの区は平均所得も低く、家賃相場や住宅購入の相場も安い地域です。