荒川 これまでの価値観では生きていけないことを感じ取っている若者もいるわけですね。

石山 若い人たちにとって、安心、安全のステータスが変わってきているなと感じています。特に、コロナ以降、リスクと共存する社会というのが前提になっていると思います。

 今は大企業でも倒産する、何が起こるかわからない時代。そういう時代だからこそ、複数の選択肢を持っているということが、安心や安定につながります。

 例えば、この仕事がなくなっても、じゃあこっちの仕事とか。子どもを預かってもらいたいときに、親や施設だけではなくて、相談できる人やグループがあると安心ですよね。

 人とつながることで、自分のアイデンティティも見えて、安心もする。そういうライフスタイルを選んでいるように思えます。

荒川 社会が変わっていくことは確実ですし、どこかで大きな変化があるという前提で、選択肢を複数持っておく必要がありますね。

 自分の生き方を一本道のように考えていると、そこから外れたときに悲劇を見る。結婚しなければいけない、子どもをもたなければいけない、金持ちにならなければいけない、ということはありません。

石山 日本は宗教的な意識が薄れてきた結果、「私は良い人間であるか」と自分の良心に問う機会を弱めてしまったと思います。

 その結果、お金が大きな尺度になって、すでにある仕組みや制度に頼るようになってしまったところがあると思っています。

 そういうものが必要ないと言いませんが、それが本当に自分の人生を豊かにするのか、自己の良心に問うというのがもっと大事だと思うんです。

 実は、私がシフトで実践しようとしているのは、そういった意識の修行です。誰かと意見がぶつかったとき、自分が何か悪くなかったか。すぐに別れるのではなく、どうしたらこの人とずっと一緒にいられるか。わかりあえない人同士が、家族というフィルターを通して、どこまで向きあえるか修行しています。

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シフトのようなコミュニティは昔の日本にあった?