
荒川 平均所得と出生率の関係を見ると、正の相関がある。つまり、所得の高い人たちは子どもを持つことができて、所得の低い人たちは子どもを持ちにくいということです。
石山 どういう影響があるのでしょうか。
荒川 所得の高い家庭の子どもたちは、同じような人たちが集まるコミュニティで成長することになります。
山手線内の内側に住んで、私立の幼稚園に通い、そのままエスカレーターで名門の大学を卒業し、大企業に就職し、高年収を稼ぐ。周りも同じような境遇の人たちで占められる。いわば世襲型の同類縁のようなものです。
驚いたのが、先日、とある新入社員の方と話したんですが、販売や飲食などのアルバイトをしたことがない、というんですよ。家庭教師を1回やったくらいだと。
接している世界が狭い。いろんな人たちと出会う体験を失っているんです。
石山 それは子どもの多様性を育むうえで、良くないですね。同級生とか、近所の人、たまたま知り合った人、色んな人から実体験を通じて学んでいくのが理想ですが、そういった機会を失っているんですね。
同じような危惧を抱いたことがあって、10歳下の子と話したとき、親がマンション暮らしの核家族で育ったことで、地域とつながるという感覚がないんですよ。周りに住んでいる人たちとつながる経験がまったくないんです。
荒川 アンジュさんのシェアハウス(※)に来る若者はどんな動機があるのでしょうか。
※シェアハウス「Cift(シフト)」のこと。血縁や制度によらない「新しい家族のかたち」をつくっている。記事前編より
石山 お金の価値観について変わってきていて、このグローバル時代に、日本で1千万円稼いでも、為替とかインフレの影響とかで、価値が目減りしてしまう。自分の力ではどうにもできない。お金が一番の価値ではないと思う人も多くなっていると思います。
生きていく中で、人とのつながりが大切と思う人も増えてきて、そこでシフトなどに注目する人が増えているのだと思います。人に何かを頼むということは、自分でコントロールできますから。