![7月9日の「Rally For Truth アベヤメロ緊急集会」の様子。主催者が着ているこのTシャツはハードコアパンクの関係者がつくったものであり、主催者自身も音楽関係者だ。集会はDJつきで進められた(撮影/島崎ろでぃー)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/5/c/620mw/img_5c89481f5bc300592981afdb003dd60b100068.jpg)
海外ではミュージシャンが政治的意見を表明したり、政治運動に直接的にコミットすることは珍しいことではない。では日本のサブカルチャーは、政治にどのように向き合っているか。主に音楽関係者への取材から、その現状をレポートする。
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7月9日、午後7時。
東京・新宿駅東口、アルタ前広場に横付けされた街宣車の上で、オーサカ=モノレールの中田亮はある詩を読み上げた。
なあブラザー もはや家に閉じこもっていられない
テレビのスイッチをいれてくつろいでる場合じゃない
ヘロインで夢心地になってる場合じゃない
CM中にビールをとりに行ってる場合じゃない
なぜなら…革命は中継されないからだ
2011年に62歳で死去したアメリカの詩人でソウル/ジャズ・ミュージシャンでもあるギル・スコット=ヘロンの「革命はテレビ中継されない(The Revolution Will Not Be Televised)」。中田本人が訳したものだ。
7月9日のアルタ前広場は、「Rally For Truth アベヤメロ緊急集会」と題された政治集会に参加する人で埋め尽くされていた。普段のライブステージと同じブルーのモッズスーツを着た中田は、その集会の「オープニングアクト」として登ったのだった。
しかし彼は歌をうたったわけではなく、演説をしたわけでもなかった。ただ「革命はテレビ中継されない」を朗読し、軽く聴衆を煽り、車を降りた。
●「街へ出ろ」と煽る詩 フジロックでの一騒動
ギル・スコット=ヘロンのこの詩は1970年、公民権運動とブラックパワーの絶頂期が過ぎつつあった頃に発表された彼のファーストアルバムの冒頭に収められたものである。ブラックパワー運動の提唱者であるストークリー・カーマイケルによれば、“The revolution will not be televised”というフレーズは、運動の中で頻繁に用いられた「街へ出ろ」というアジテーションだった。