ミステリアスな霧の中、ブルゴーニュ運河を自転車で巡る人々はさまざま。疾走する人、のんびり旅の人、そして、釣り人がイッパイ(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)
ミステリアスな霧の中、ブルゴーニュ運河を自転車で巡る人々はさまざま。疾走する人、のんびり旅の人、そして、釣り人がイッパイ(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)
運河唯一のトンネルに入る観光船(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)
運河唯一のトンネルに入る観光船(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)
この10年で劇的に増えた風力発電(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)
この10年で劇的に増えた風力発電(撮影/フォトジャーナリスト・大津慎一)

 7月1日から、自転車レース「ツール・ド・フランス2017」が始まった。自転車先進国のフランスでは、自転車でのんびり旅をする人も多い。

【写真特集】まるで絵画のような光景! ブルゴーニュ運河をめぐる旅

 フランスでは、自転車は「ベロ」と呼ばれて格段に愛されている。天気の良い週末には、そこらじゅうで自転車乗りの姿を見かけるし、自転車専用道の整備も日本とは比較のしようもない。さすが、ツール・ド・フランスの国。

 ツール・ド・フランスを走る選手の平均時速は45キロぐらいだが、今回のブルゴーニュ運河沿いを行く240キロの旅は時速約10キロ、1日6時間あまりをのんびりと走るだけ。そのうえ、平坦なルートだから、ママチャリでも大丈夫なぐらいだ。

 自転車は、1週間単位で借りられるレンタサイクルでも、気張って買ってしまってもいい。鮮やかな緑に輝く大地、豊かな自然が待っている──。

●迷うことない自転車道

 出発地はブルゴーニュ地方の中心都市ディジョンの港。19世紀の政治家であり、フランス近代詩の祖でもある抒情詩人アルフォンス・ドゥ・ラマルチーヌの詩のように、聞こえてくるのは小鳥のさえずり、動物の啼(な)き声、せせらぎ、木々の梢を風が揺らす音だけ。スタート直後こそ、高速道路と並走しているが、やがて、山の中に運河は進む。

 視界に広がるのは、緑の牧場。フランスはワイン同様に世界最高クラスの肉牛の産地でもある。そこにはたったひとつの看板もない。文明社会の究極の自然とはどんな風景なのかを、考えさせられる。何とも目に優しい。

 1832年に完成したブルゴーニュ運河は、大西洋へと流れるセーヌ川と、地中海に向かうローヌ川の支流ソーヌ川とを結んでいる。初日の目的地プィイリー・アン・オクソワまで運河は堰ごとに上っていくが、後はずっと下りだ。

 運河の脇を走る自転車専用道は、150を超える運河堰、運河を横切る一般道と交差しているところで上り下りがあるが、時に横断する道路の前でストップ、「左見て右を見る」(日本とは逆!)さえ気をつければ、道に迷うことも、事故の心配もない。

 犬を連れて散歩する人、釣り人、自転車に乗る人、行き交う人々と目が合ったら、「ボンジュール」とアイサツすれば、笑顔が返ってきて、なんだか、自分がフランス人になった気にさえなるだろう。

 運河沿いには見どころも多い。初日、40キロほど走ったあたりで右手の山頂に見える城はシャトーヌフ。プィイリーの港には、日本人建築家・坂茂(ばんしげる)設計の屋根の下、昔の船が飾られている。

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