中山さんがマンションの修繕費を見積もると約1500万円。今後は計画を立て屋上防水や外壁の改修工事、給水設備やエレベーターの更新工事など、順を追って修繕していきたいという。

 通常、マンション管理士に委託すると業務委託費が発生する。だが、中山さんは自ら国土交通省の補助事業「マンション管理適正化・再生推進事業」に応募している一般社団法人日本マンション管理士会連合会(東京都千代田区)に同マンションを申請し採択された。同事業はマンションの維持管理の適正化や再生を促進するもので、国が約8年前から実施。毎年上限1千万円が同連合会に支給され、その中から同連合会が申請・採択されたマンション管理士に業務を委託。こうして、同マンションは本来であれば、100万円近くかかる中山さんへの業務委託費を、助成金でまかなうことができた。

 中山さんはアドバイスする。

「困った時は、マンション管理士のような建物管理の専門家に相談して、味方につけてほしい」

“自治体”という味方を見つけ、限界化を免れたマンションもある。

 京都市左京区の吉田山の中腹に立つ「真如堂(しんにょどう)マンション」。管理組合理事長の楢崎勝則さん(63)は振り返る。

「僕ら住民だけでは、立て直すことはようできませんでした」

 マンションは築43年。3階建てで全13戸。元々管理組合はなく、総会も開かれたことがなかった。住人の女性(80代)が「管理当番」として電気代や水道料金などを毎月徴収していた。しかし、10年に楢崎さんが管理当番を引き継ぐと徴収が滞り始めた。

お金の流れを透明化

 困っていたところに手を差し伸べたのが京都市だった。

 同市では11年、築30年以上経過した市内の「高経年マンション」663件を対象とした実態調査を実施。管理規約がない、管理費・修繕積立金の未徴収、大規模修繕工事を実施していないマンションを「要支援マンション」と位置付けた。

「要支援」は市内に47棟(11年度)。市はNPO「マンションサポートネット」(当時はNPO集合住宅改善センター京都事業所)に委託し、要支援マンションの再生を支援する。

 10年、楢崎さんのもとに同NPOの副理事長、堀井文子さんたちが支援を申し出た。

 楢崎さんは堀井さんたちの協力のもと、総会を開き、11年には管理組合を設立。帳簿と合わない会計を正常化し、お金の流れを透明化した。さらに、今後20年にわたる長期修繕計画を作成し、それに基づき、住宅金融支援機構から560万円の融資を受け、13年には大規模修繕を実現した。

 楢崎さんは笑顔でこう話した。

「もうちょっと手を入れて住みやすい環境をつくり、お年寄りも安心して暮らせるよう築60年まで持たせたい。その後は、次世代の判断に任せたい」

 老いるマンションの再生。成功するか否かは、住民の知恵と覚悟にかかっている。(編集部・野村昌二)

AERA 2017年5月29日

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