「賃貸と違い、分譲マンションの管理は区分所有者の責任。スラム化に至る事態を防ぐには、管理組合を機能させ、必要な修繕を行って資産価値を維持し、中古としても魅力的な物件であるように努力していくことが必要。新たな購入希望者が出てくる限り、スラム化を防ぐ可能性は高くなります」
横浜の限界マンションも、管理組合を機能させることで再生への道を歩み始めている。
4月中旬、横浜市内で緊急に開かれたマンション対策理事会。管理組合理事長の田邊賢一さん(50)は、集まった理事たちを前に口を開いた。
「スタート地点に立てました」
●マンション管理士を活用
3月末にリフォームローンの審査が通り、1500万円の融資を受けることができたのだ。マンションには自己資金として200万円ある。田邊さんは、計1700万円で優先順序をつけながら必要な箇所から修繕をしていきたいと説明し、理事たちの理解を求めた。
このマンションの再生に携わっている、スラム化マンションの管理にも詳しいマンション管理会社「横浜サンユー」(横浜市)の社長、利根宏さんは言う。
「多くのマンションは管理規約によってマンションに住む内部所有者しか理事になれません。しかし、高齢化した住民はマンション管理に消極的になる。そうした場合、若い外部居住の所有者が理事になることで、再生がスムーズに進むことも多い」
田邊さんは外部オーナーとして部屋を所有。このマンションは管理規約によって外部オーナーも理事になれることから、2年前に理事長になるとマンション再生のために尽力してきた。田邊さんは意欲を見せる。
「最初の10年はここまで、その後の10年はここまでと、筋道を立てやっていきたい」
もっとも、大半の管理組合は「素人集団」というのが実情だろう。そうした中、マンション管理士を活用し再生に乗り出すマンションも増えてきた。マンション管理士とは、マンション管理の専門知識や経験を持ち、管理組合の立場になって助言・指導をする国家資格。現在、2万3千人余が登録している。
●長期修繕計画を作成
東京都豊島区にある5階建て築36年のマンション(全9戸)。管理業登録もない不動産業者が「名ばかり管理者」として管理を続けてきた。それが3年前に突然、これ以上管理できないと管理組合の通帳と印鑑をマンションの区分所有者に返却してきた。通帳の残高はわずか100万円弱。これまで計画的な大規模修繕をしていないのに、1戸あたり2万5千円の管理費の大半が管理業者に支払われていた。
困惑した住民が頼ったのが、マンション管理士の中山孝仁(たかひと)さん(63)。同マンションの住民が人づてでマンション管理士の存在を知り、藁にもすがる思いで中山さんに頼ったのだという。
「まずマンションのルール作りとして管理規約を作成して管理組合を立ち上げ、建物劣化調査を行って、長期修繕計画を作成していきました」(中山さん)