翌朝7時前に目的地の東京・池袋駅に到着。「最終的には乗客は6人」との話を、到着後すぐに降車した別の乗客が教えてくれた。通常とは逆で、同乗する乗客同士が顔を合わせることのほうが難しそうだ。
この便に乗っていた大阪府門真市在住の歯科医の男性(46)は、ニュースでこのバスの存在を知ったという。感想は「思ったよりよかった」。東京在住の会社員男性(26)は、シートベルトの安全性を考慮して140度までは倒れる背もたれについて「もっと倒れたらよかったかな」と話していた。
●採用でも効果を期待
このバスを両備ホールディングスと共同で運行する関東バスは、都内では「規模の小さい」バス専業の会社。近年、高速バス利用者数が横ばいの中、業界の活性化と、従業員のモチベーションアップを願って高額のドリームスリーパー〓を購入したという。採算を考慮すると、毎日平均8割の乗車数が当面の目標だ。
高速バスは季節や曜日によって利用者数が変動する。現在の課題は平日の乗車率。関東バス経営管理室室長の久永和彦さんは「2万円の価値があると思っていただけるよう、ハード面だけではなくソフト面のサービスに関してもお客様のご意見を聞いていきたいです。売り上げとは別ですが、『ドリームスリーパー〓がある関東バスに入社したい』というドライバー希望者が出てきてくれたらうれしいですね」とも話していた。
バス会社の新たな挑戦は始まったばかり。まずは乗車してもらい、次にリピーターになってもらうという二つの山を越えなければならないが、車内の乗客同士が出発から到着まで視線の干渉もなく、気兼ねなく過ごせる「完全個室型」というスタイルには大きな魅力がある。このサービス、世間に広がるか──。今度はアナタ自身が試してみてはいかが。
(編集部・小野ヒデコ)
※AERA 2017年3月27日号