小島慶子(こじま・けいこ)/タレント、エッセイスト。1972年生まれ。家族のいるオーストラリアと日本との往復の日々。オーストラリア行きを決断した顛末を語った新刊『これからの家族の話をしよう~わたしの場合』(海竜社)が発売中
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「産後うつ」が注目されています。経験のある人もいるかもしれません。私もそうでした。でも当時は自分の性格の問題だと思っていました。結局それが、夫との問題や不安障害の発症にもつながっていったのです。

 出産した人のうち1割ほどに産後うつの疑いがあり、早期のケアが必要とされます。放っておけば、育児放棄や虐待、あるいは自ら死を選んでしまうことにもなりかねません。厚生労働省は、2017年度から産後2週間と1カ月の産婦健診の受診費を助成し、実質無料化することを決めました。

 出産後はホルモンバランスが大きく乱れ、授乳などで睡眠不足になります。新しい生活への不安もあり、追い詰められた気持ちになりがちです。成育環境で親子関係に傷を抱えている人は、それが悪化することも。周囲の人に気持ちを打ち明けても産後うつとは気づかれず、育児誌にはハッピーなママたちが満載。幸せなはずの出産で落ち込んだり苛立ったりしてしまうなんて母親失格だと、自分を責めてしまうのです。

 初産でそんな状態になった私は、ギリギリの心理状態で仕事に復帰し、毎日必死でした。そんなとき夫が「慶子は育児にかまけてばかりだ」と拗ねて、信頼を裏切ったのです。加えて成育家族との関係のトラウマが悪化、赤ちゃんに怒鳴ってしまう自分は何かがおかしいとカウンセリングを受け始めました。3年後に第2子を出産した後に不安障害を発症。職場に診断書を提出したときに上司は「要するに、育児ノイローゼだろ」と迷惑そうな顔をしました。

 自分はダメな妻でダメな母親で、職場のお荷物なんだ、何の価値もないと思いつめ、死にたいと願うようになりました。今生きているのは、精神科医と臨床心理士のサポートのおかげです。

 つらかったら早めにケアを。一人でも多くの人に「産後うつ」を知ってほしいです。

AERA 2017年3月20日号

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