この記事の写真をすべて見る
東日本大震災から6年がたつ。被災地の復興は道半ばで、「余震」とされる地震も続く。2016年には最大震度7の地震が2度、熊本を襲った。だが、不動産の値動きを見る限り、震災の記憶は薄れていると言わざるを得ない。その代表例が、東京だ。AERA 2017年3月13日号で、「震災と不動産」を大特集。データを駆使して、「危険度が高いのに値上がりしている人気の街」を浮かび上がらせた。
【ランキング11位以降はこちら】
* * *
たどり着いたのは、2016年に日本で一番有名になった「階段」だった。
1400人(17年3月現在)が暮らす東京都新宿区須賀町。須賀神社など寺社が多いこともあり、都心とは思えないほど静かで、古い町並みが残る。ドラマや映画のロケにも使われ、16年に大ヒットしたアニメ映画「君の名は。」で主人公2人がすれ違うシーンのモデルになったのが、須賀神社の境内に続く階段だった。いまや国内外からファンが訪れる「聖地」となっている。
ここが、東京23区で最も「危険度が高いのに値上がりしている人気の街」だと知ったら、聖地巡礼中の観光客も驚くだろう。
有史以来、数々の大地震に見舞われてきた東京都は、1975年から「地震に関する地域危険度測定調査」を行い、都内の市街化区域5133町丁について、地震で建物が倒れる危険性、火事が燃え広がる危険性をランクづけしてきた。「町丁」とは市区町村内の住居表示に用いられる区分のことで、地盤が弱かったり液状化の可能性があったりして建物が倒れやすい地区は建物倒壊危険度が、燃えやすい木造住宅が狭い路地を挟んで密集している地区は火災危険度が高くなる。
最新の13年調査によれば、両ランクを総合的に見て、災害時の救助の難しさを考慮した総合危険度で、5段階のうち「危険度最高」「危険度高」と分類された368町丁はすべて東京の中心である23区内にある。そのエリアに、128万人(15年時点)が暮らす。
●知らずに住む外国人も
本誌は今回、不動産情報サイト「住まいサーフィン」を運営するスタイルアクトのデータをもとに、総合危険度が高いのに、16年に取引された賃貸物件の賃料の平均が42平方メートルで10万円以上の町丁をピックアップ。不動産情報会社東京カンテイのデータを元に算出した、その町丁が含まれる地区の中古マンション売り出し価格の上昇率(12年から16年まで)を重ねることで、「危険度が高いのに値上がりしている人気の街」を浮かび上がらせた。
須賀町は中古マンション価格の上昇率が高く、42平方メートル換算の賃料も13万円超と高め。JR中央線の信濃町駅と四ツ谷駅に東京メトロ丸ノ内線の四谷三丁目駅を加えた3駅からいずれも徒歩10分程度と交通の便もいい。長くこの地で暮らしてきた住民が高齢化し、代替わりのタイミングで土地が出るようになった。地元町会長の清水啓二さん(74)はこう話す。