「ただ教科書を学ぶとか、子どもたちがつまらない顔をしているとか、そういう教育ではダメだと思ってつくった学校なので、先生にはクリエーティブなカリキュラムを作ってもらわないと困る」

 この方針に合わない先生には辞めてもらうこともある。

 マット先生はさまざまな教育方法を調べて参考にしたが、

「先生が話し続け、子どもはただiPadで言われた通りにやる、というところが多かった。私は子どもたちに席から立ち上がり、互いに影響しあって、自分たちで考えながら学んでほしいんです」

 習得してほしいのは、プログラミング言語だけではない。あらゆる場面でコンピューターが不可欠になった時代への適応能力と、自分がやっていることへの自信。この二つを子どもたちに身につけてもらいたいとマット先生は言う。

「プログラミングでは思い通りにならないことが多々あります。問題を解決するには、何をどんな手順でやればいいのか。それを自分で考え、実際に解決することで、論理的思考や創造性が養われる。将来的にプログラマーになるならないにかかわらず、日常生活においても極めて重要な能力です」

 子どもたちは、約半年でスクラッチジュニアの基本動作をほぼ習得。現在は、先生が誤作動を仕組んだプログラミングを子どもが修復するなど、問題を実際に解決する作業に重点的に取り組んでいる。小3からは、さらに高度なプログラミング言語に進むという。

 子どもたちの多くが英語を学ぶプリスクールに通っていた経験を持つが、年長の梅谷遥ちゃん(5)は違う。3月下旬に福岡県朝倉市から引っ越してきて、4月開校の同校で初めて英語オンリーの授業を経験している。

●格段に伸びる英語力

 父親の洋介さん(39)は言う。

「今後も社会が変わらないならば従来型の偏差値を高める教育でもいいかもしれないが、人工知能も入ってきて、おそらく社会は変わる」

「プログラミングと英語が必須」という竹内校長の考え方に共感し、同校への娘の入学を決めた。母親の繕美(よしみ)さん(36)は、20代でニュージーランドに滞在したことがあるが、なかなか英語が身につかなかった。娘には英語を習得してほしい。同校に通うようになって半年。娘の英語力には、

「発音がネイティブのよう」

 と満足している。遥ちゃんは、

「英語はまだ分からないことも多いけど、先生が面白いから楽しい。マット先生のプログラミングの授業が一番好き」

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