「子どもたちの65%が今はない職業に就くといわれる時代、班活動の遠足とキャリア教育のどちらが大事だと思いますか」

 そう保護者に問いかけた。新しいことを始めるには、何かを捨てなければならない。「その取捨選択こそ校長の重要な職務」と語る平川校長は、教師の労働環境についてもこう話した。

「本校の教師も多忙で、それを解消することは難しいですが、ムダな忙しさを削ぎ落とすことが私の務めだと思っています」

 アエラのアンケートには高校教師のこんな声も寄せられた。

「授業準備、定期考査作成、面談など、教師として本来果たすべき仕事で忙しいのはむしろ喜ぶべきことです。しかし、現実には校務分掌、部活指導はじめ、教育委員会からの調査や行政職が行ってもよいはずの事務処理など、教師本来の仕事に付随するさまざまな仕事で忙しい。教師の仕事は、学び続け、知性を磨き続けなければ、10年で出がらしになってしまいます」

●少人数学級の実現を

 文科省は学校現場における業務の適正化に向け、教師の事務作業を補助するアシスタント配置の検討や、調査の削減、スクールカウンセラーやソーシャルワーカー拡充などの方針を打ち出している。その一方で、20年以降に実施される新学習指導要領の中央教育審議会の審議まとめ案では、小学校の英語教育拡充などを打ち出した。教師がさらに多忙を極めるのは必至だ。

 先の子安教授は言う。

「日本は国際的に見ても、教育予算が少なすぎる。まずはOECD諸国並みの少人数学級を実現すべきです。本気でコストをかけないことには、教師の多忙問題の解決は不可能です」

(編集部・石田かおる、小野ヒデコ)

AERA 2016年8月22日号

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