文部科学省が14年に行った教師の「業務の負担感」に関する調査でトップに挙がったのも、「国や教育委員会からの調査やアンケートへの対応」だった。東京都内の公立中学校に勤める男性教師(49)はぼやく。
「毎日、なにかしらの調査に取り組んでいる感じです。ただチェックマークを入れるとか、ちょっとコメントを書けばいいようなものは少なく、記述式の手間のかかるものが多いのです」
例えば学校図書室を改革しようとなると、蔵書数や貸出数はもとより、どの授業でどれぐらい使ったか、昼休みの利用者数の1カ月間ののべ人数、などのデータが求められる。
同種の調査依頼が集中することも珍しくない。都立高校教師(56)は次のように語る。
「今年7月の『18歳選挙権』導入時には、さまざまなところから調査依頼がありました。少しずつ切り口は違い、集中するとボディーブローのようにきいてくる。定期試験とも重なっていましたしね……」
●個人情報保護法が壁
「新しい制度」「学校外のもの」を導入すると、それがたとえ教師の業務を軽減するための「外部人材の活用」だとしても、費用対効果を測るための報告書の作成がいちいちついてまわり、別の負担を増やす。
「結局のところ議会対応のためですが、そのしわ寄せが全部、現場にくる。新しいものはいらないと言いたくなる」(都内公立中学校教師)
学校の何がムダで、どうすれば事態は改善するのか。編集部は、「アエラネット」などを通じてアンケートを実施し、339人の現役・元教師、149人の保護者から回答を得た。
まず保護者から多く寄せられたのは次のような声だ。
「学校から配られる大量のプリントを、メールなどに置き換えられないのか」
そうすれば情報は確実に届くし、仕事を持つ親も通勤途中などに読める。教師の負担軽減にもつながり、双方にメリットがあるはずだ。
「教師はいま職員室で1人1台パソコンを持っており、メールやインターネットも日常的に使っています。教師のICTスキルやマインドが特に遅れているわけではありません」